ワインの知識~シャンパーニュとは~

図書館で借りてきた本。
ヴーヴ・クリコのワインの箱と同じ色の本。

フランスのシャンパーニュ地方は
イギリス人によって開拓されたワイン産地で、
フランスの最北部にある。

そのため、ブドウの糖度は上がらず、
アルコール度数にして8度くらいまでしか上がらない事も多い。

シャルドネやピノ・ノワールの産地だが、
ブルゴーニュ地方のように赤ワインや白ワインはほとんど作らない。

しかし、世界で最高峰の泡(スパークリング)の産地として名をはせている。

その「泡の王国」を作り上げた張本人が、
バルブ=ニコル・クリコ・ポンサルダンという女性。
通称、ヴーヴ(未亡人)・クリコ。


この愛称が示すとおり、上流階級生まれの彼女は、
母となるためだけの教育を受けて育った。
27歳で夫と死別し、なんの職業訓練も受けずに、
小さな家族経営ワイナリーを引き継いで経営することになる。


その彼女がフランス革命から、
その後のヨーロッパ中を敵に回した戦争という激動の中、
新しい手法の開発、ロシア市場の開拓を通して、
一躍、最大手のシャンパーニュ・メゾンへと成長させていく。


そして現代では、「ヴーヴ・クリコ」の愛称は、
ワインの銘柄の一つとして名をはせている。
その一生を描いた一冊。
非常におもしろく、あっという間に読了。

前回紹介した、「シャンパーニュの帝国」という本から学んだことを。
まず、シャンパーニュ地方とは何かということから。

フランスの中でも制約の多いブルゴーニュ地方に比べて、
シャンパーニュは何かと自由な印象がある。

たとえば、ブルゴーニュ地方なら、
違う畑のブドウを混ぜるのもダメ、
違う年のワインを混ぜるのもダメ、
違うブドウ品種を混ぜるのもダメ、
もちろん補糖も補酸もダメ。

これがシャンパーニュ地方になると、
違う畑どころか、数10種類のブドウを混ぜるのが普通、
違う年のワインを混ぜることも普通、
ブドウ品種も混ぜてOK、
補糖はしないメゾンを探す方が難しい。

そんな対照的な地方なわけだけど、
それでもやはり決まりごとがあって、
それが品質を一定レベル以上に保っているとも言える。

以下、引用。
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真正シャンパーニュに使用できるブドウは3品種のみ
-黒のピノ・ムニエとピノ・ノワール、白のシャルドネ-
に規制されている。
(このほか、アルバンヌ、プティ・メリエの古代品種も認められている)

この3品種のブレンドがワインのスタイルを決定する。
現在、シャンパーニュには2つのスタイルがある。

「ブラン・ド・ノワール」は
少なくともブレンド中に1種類の黒ブドウを使用する。
「ブラン・ド・ブラン」は
白ブドウ(シャルドネ)だけで造られる白ワインである。

シャンパーニュに使用される白ブドウはシャルドネ種だけだから、
ブラン・ド・ブランは基本的に発泡性のシャルドネだ。
ピノ・ムニエは熟成にあまり耐えないので、
ヴィンテージもののブラン・ド・ノワールは
実際には発泡性のピノ・ノワールということになる。

現在では、ヴィンテージ(ある1年の収穫だけを使用する)か
ノンヴィンテージ(複数年のワインをブレンドする)かについての
情報と並んで、スタイルもラベルに表示される。
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さらに、シャンパーニュ地方をシャンパーニュ足らしめる要素、
風土としてのテロワールについての記述も。

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21世紀、科学者はシャンパーニュ地方のブドウ園の化学分析を行い、
その特性を確認している。

酸性の石灰質土壌は果実のアロマを増し、
北国という位置がブドウが糖分を過剰生産するのを防ぐ。

湿った春と乾いた夏がブドウからゆっくりと水分を奪い、
生い茂った葉が果実に影を落としすぎることなく、
ブドウはだんだんと熟すことができる。

土壌の石灰は、冬期は地面に水分を保有させ、
乾いた夏にはゆっくりと放出させる。

シャンパーニュを供するには正しい温度は7度前後、
ボトルを氷水で約30分冷やすことで最も適切に得られるが、
この温度で供しさえすれば、そのフレーバーが開花するように、
ぶどう園における適切な条件がブドウに際だった特徴を与える。

その条件はあまりにも微妙で複雑であり、
適切な土壌で適切な量の雨と陽光が適切な時期に必要となるので、
ヴィンテージ物のできる年は滅多にない。

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上記にもある通り、ブドウの適地は温暖化によって移動しつつある。
北海道が注目されるのも、そういった理由もありますよね。
不謹慎だけど、今後の変化が楽しみです。

これまた、「シャンパーニュの帝国」という本より。

現代ではシャンパーニュ(シャンパン)と言えば、
贅沢な酒の代表格的な言葉になりつつありますが、
(夜の街のドンペリがその象徴か)
本当のシャンパーニュはどのようにして生まれたのか。

有名な俗説は「修道士ドン・ペリニョン」が、
苦労の末に泡をもったワインを生み出した話。 

シャンパーニュが生み出されたとき、
「早く来なさい!私は星々を飲んでいるところだ!」
と歓喜したというのは、いわば伝説となっている。

しかし、現実は全く逆だったようだ。

ドン・ペリニョン修道士が生きた1660年代には、
この地方は泡の無いスティルワインを作っており、
それがなぜか発泡してしまい、生産者の頭を悩ませた。
(当時は泡の立つワイン=腐ったワインと考えられていた)

だから、むしろドン・ペリニョン修道士に与えられた使命は、
「泡を消すこと」だったと考えられる。

彼の試行錯誤が成功していれば、
スパークリングワインとしてのシャンパーニュは存在しなかったことになる。

では、シャンパーニュはいかにして生まれたのか。

以下、引用。
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シャンパーニュ地方のワインに出現する奇妙な泡が
生産者を悩ませ始めたのは中世に遡る。
原因は異常な寒冷気候だったようだ。

14世紀末、ヨーロッパはいわゆる「小氷河期」にはいっていた。
この気候変動は19世紀もかなりになるまで続いたが、
フランスにおけるワイン造りを、
今日の科学者が地球温暖化が変えるだろうと予測するのと同じほどに、
劇的に変化させた。

寒冷期間の拡大が問題となったのは、
シャンパーニュ地方の気候がすでに寒冷だったからだ。
北緯49度の周辺に位置し、
現在でも良質のブドウを生産する地域としては最北端に位置する
(今後、長くは続かないかもしれない。科学者はブドウ栽培の北限が
英仏海峡を越えてイギリスに達するのには、
気温があと2、3度上昇すれば十分だと考えている)

最悪だったのは1560年から1730年で、
このあいだにはさらに気温が低下したために、
冬期にはブドウ果汁をワインに変えるのに必要な
自然発酵の過程が停滞した。

(中略)

つまり、イースト菌がすべての当分を消化する前に
気温が下がりすぎてしまうために、菌はただ冬眠してしまう。
ワイン樽に残る糖分量を測定する技術がなかったので、
生産者は季節のなすがまま、自分の勘に頼らざるを得なかった。

春に穏やかな天候が戻ってくると、イーストによる発酵過程が再開される。
現代のワイン醸造家はこれを「2次発酵」と呼ぶ。
17世紀のワイン生産者はもっと辛らつな言葉を使い、
発泡したヴィンテージを「悪魔のワイン」と呼んだ。

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この「悪魔のワイン」を商業戦略上の要とし、
高価な嗜好品としての地位を確立したのが、
本書の主人公「ヴーヴ・クリコ」であったというわけだ。

これまた「シャンパーニュの帝国」という本より。

ヴーヴ・クリコが求めたシャンパーニュの色合いは、
中世より造られてきた伝統的なシャンパーニュの色、
つまり「土色がかったロゼ」「茶色がかったピンク」ではなく、
現代と同じ、澄み切った「麦わらの淡黄色」だった。

それを実現するためには、澱をうまく抜く必要がある。

方法は2つだった。
ひとつは「トランスヴァザージュ」=詰め替え。
もうひとつは「デゴルジュマン」=澱抜き。

「詰め替え」は、その名の通り、古い瓶の底に澱を溜め、
それを残して新しい瓶に詰め替えること。
ただしこれでは、肝心の泡がかなり飛んでしまう。

そこでヴーヴ・クリコのワインが採用した手法は、
瓶をほぼ逆さまにして保管し、
それを一定の角度ずつ回転させる「ルミュアージュ」だ。
シンプルな手法だが、デゴルジュマンにかかる時間は圧倒的に短縮した。
現代でもほぼすべてのシャンパーニュ・メゾンがこの手法を採用している。


もう1点追記するなら、
「そもそも澱が出ないよう、樽の段階で清澄させてしまえばよいのでは?」
という疑問もある。

これに対する答えも書かれている。


以下、引用。

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皮肉なことに、現在、専門家はこの気に障る澱こそが
偉大なスパークリングワインの誕生に欠かせないことを認めている。

ボトルがカーヴで貯蔵されている1年かそれ以上の間、
発酵はアルコールと泡以上の物を造りだす。

イースト菌もまた「自己分解」と呼ばれる科学的な課程で分解される。

「自己分解」は、分解の過程で自然に生産される酵素とワインが接触するときに
-言い換えればワインがイースト菌の死骸を含んだまま熟成するときに-
開始される。

ワイン生産者はこれを優雅に「澱の上での熟成」、
フランス語では「シュル・リ」と呼ぶ。
上質のシャンパーニュに独特の豊かなナッツ香が生まれ、
満足のできる結果となる。

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シャンパーニュの泡は、香りをはじけさせる働きも持つ。
その香りを豊かにする澱こそが魅力の要ということだ。



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