栽培知識~ワイン用品種~

はじめに

黒ブドウ

ピノ・ノワール

上記の写真は北海道余市のドメーヌ・タカヒコの「ピノ・ノワール」。

ワインに使われる(醸造専用の)葡萄品種はたくさんありますが、
ワイン好きに「5つ葡萄品種を教えて」と言えば、
必ずこの「ピノ・ノワール」が出てくることでしょう。
それくらい人気のある品種です。

では、どんな品種なのか。
「10種のぶどうでわかるワイン」という本から引用すると、

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世界的にワイン愛好家に大変好まれているブドウ品種ですが、
その名声に対して、栽培量はあまり多くはありません。

ピノ・ノワールは、暑く乾燥した気候には向きません。
しかし寒すぎても、湿度が高すぎてもダメなのです。
また、雨にも、風にも弱いのです。

(中略)

ブルゴーニュで申し分のないピノ・ノワールを収穫した年が
連続することはまずないというくらい、気難しいブドウなのです。
その分、良かった時の喜びはひとしおなのでしょうね。
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高貴でわがまま、
素晴らしい出来のものは最高に素晴らしく、
今一つの出来のものは最高に今一つのワイン(笑)ができるブドウです。

生活を賭けて葡萄を作る生産者にとって、
これほどリスキーなブドウ品種は無いでしょう。

しかしながら、ワインラヴァーは必ず、
その愛好家としての最終段階として、
必ずピノ・ノワールに行く着く、と僕は思っています。

ピノ・ノワールのみで作られる、フランス・ブルゴーニュ地方のワイン。
他のブドウ品種と混ぜることを許されないこの地方のワインは、
(僕の感覚では)大体、2本に1本くらいは期待はずれです。
(3000円を下回ると、8割くらいハズレです…)

値段はどの国のワインよりも高いのに、
半分くらいの確率で「あれ?」ってことになります。

しかしながら、当たりを引いた時の官能といったら無いんです。
表現できないほどのたくさんの素敵な香りが鼻をくすぐります。
「1000の花束を抱きしめるよう」とたとえられるのも頷けます。

そしてするりと喉を通るのに、余韻は驚くほど長い。
ワイン会で素晴らしいピノの試飲があると、
飲んだ後しばらく、一斉にみんな黙りますもん。
(その様はまるでダークな秘密結社のよう…笑)

ピノ・ノワールしか作ろうとしないアメリカ・オレゴンの生産者は、
「あなたにとってピノ・ノワールとは何ですか?」と聞かれ、
「狭いスイート・スポットをヒットしたときのエクスタシー」
と答えたそうです。
言い得て妙だな、と思いましたよ(笑)

ピノ・ノワールを熱く語ると、ドン引きされること請け合いなのですが、
これにハマると、ワインから抜け出せなくなるんだろうと思います。
そのうちの1人に、16世紀に活躍した詩人シェイクスピアがいます。
彼はしばしば詩の一節にワインを登場させます。
たとえば…

「フランスはブルゴーニュの神酒の甘美さ、
 フルーティーさ、色(ローブ)」

500年も前から、ドハマリする人はいたんですね~。

ちなみに、発泡性ワインの最高峰「シャンパーニュ(シャンパン)」にも、
ピノ・ノワールが使われることがあります。
こちらは果皮を取り除いて発酵されるので、
もちろん「白」ワインになります。
ピノ・ノワールの赤ほどの高貴さはないですが、
楽しい雰囲気の中にもコクがあって、僕は非常に好きです。

日本でピノ・ノワールは冷涼で梅雨や台風のほとんどない、
ここ北海道を中心に造られています。
その筆頭が余市の「ドメーヌ・タカヒコ」ですが、
今回紹介した空知の「KONDOヴィンヤード」など、
他にも栽培に成功する生産者が登場し始めています。
楽しみな限りですね。

ちなみに、どうでも良い話ですが、
ネット上に「赤ワイン葡萄占い」という
性格診断みたいなものがあって、
それによると、うちの奥さんは「ピノ・ノワール」でした(笑)
「どういう意味?」と少し怒っていましたが(笑)

ついでに、その占いによると、僕は「メルロー」でした。
ってなわけで、またメルローという葡萄品種も紹介しようと思います~。

カルメネール

カルメネールというブドウ品種について、
「ワインを愉しむ基本大図鑑」に載っていたので引用。

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19世紀までのボルドーで、カベルネ・フランやメルロなどと
同等の敬意を受けていたにもかかわらず、
その後、すたれてしまったブドウ品種のひとつ。

長い間、もはや単独では飲めないのではないかと思われていたが、
1990年代になって、チリで「メルロ」の名で栽培されている
ブドウのかなりの割合が、実はカルムネールであることが判明し、
今では多くの販売元が品種名ワインとして販売している。

まちがいなく、非常に潜在力の高いブドウのひとつで、
上手に造ると、メルロの果実味をさらに凝縮させたような
力強いワインになる。
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カベルネ・ソーヴィニヨン

赤ワイン用のブドウに関しては、
ブルゴーニュと違って、ボルドーはブレンドが基本です。
今回のカベルネ・ソーヴィニョンと、次に紹介するメルロー、
そしてカベルネ・フランなどを、造り手の判断でブレンドし、
美味しいワインに仕上げていきます。

そんな中で、最も多くの比率を占めることが多いのが、
今回紹介する「カベルネ・ソーヴィニョン」です。

まずは「10種のぶどうでわかるワイン」という本より紹介。

「渋みの強いワインを生むブドウ品種の筆頭に挙げられるのが、
 カベルネ・ソーヴィニョンです。」

「カベルネ・ソーヴィニョンに含まれる豊富なタンニンは、
 若いうちはイガイガとしていて、香りを閉じこもらせ、
 ワインの味わいに硬さを与えます。
 しかし、同時にそれは熟成の進行にブレーキをかける役割を持ちます。
 つまり熟成がゆっくりと進むのです。

 イガイガした渋味は、ゆっくりとした熟成により、
 バランスの良い味わいと緻密な渋味となっていきます。」

ワインを飲み始めて、フランスのワインを好きになってくると、
値段の関係でまずボルドーにハマる人が多いと思うんですよね。
(ボルドーは「バリュー・ボルドー」と呼ばれるような、
 1000円台でも美味しいワインが結構たくさんある。
 一方、ブルゴーニュは最低でも3000円払わないと当たりはない)

僕もその口なので、赤ワインのイメージは、
このカベルネ・ソーヴィニョンです。
どちらかというと内向きの、くぐもったような重厚な香り、
抜栓していきなり飲むとしびれるような渋味。

赤ワインが苦手な人は、結構このカベルネ・ソーヴィニョンの、
とっつきにくいような第一印象が苦手なのかも。

しかし、10年くらいの熟成を経たものや、
若いものでも抜栓して30分~1時間ほど置いて、
空気に振れさせておけば、ゆっくりほどけていきます。

そうなると、味わいも果実由来の甘さがでてきて、
トローンとするような香りになってくる。
ここまで待てると、これほどいいやつはいません。

さらに、世界中どこで作られていても、
カベルネ・ソーヴィニョンはカベルネ・ソーヴィニョンの味がします。
(シャルドネが地域によって味が全く違うのと対照的)

だから、1000円のボルドーも高いと思ったら、
チリとかのカベルネを探せば、それこそ500円で美味しいものもある。
(コノスルとかね)

コツさえつかめば、赤ワインの神髄を教えてくれる葡萄です。
ただ、気候としては温暖なものを好むので、
残念ながら、北海道ではほとんど栽培されていません。
北海道でも作られるようになると面白いんですが。

最後に、ちょっとディープな知識を。
「ワインを愉しむ基本大図鑑」という本より。

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カベルネ・ソーヴィニヨンというブドウは、
もともと水はけの良い砂利質の土壌を好む。

そのため、本場ボルドーのメドック地区などでは、
丘の上の砂利が厚く堆積している場所にこの品種を植え、
丘の下の粘土質の場所にはメルローを植えるというような
棲み分けを行っている。

ボルドー以外の、(たとえば日本のような)
粘土質の多い土壌の土地にどうしても植えざるを得ない場合には、
水分や栄養分をあまり吸い上げないタイプの台木に接ぎ木をし、
それでも伸び放題に伸びがちな枝葉を適度に剪定し、
さらに収穫量を減らすために摘房も強めに行うという
こまめな世話が必要になる。

房数を減らし、すべての栄養分を
残された房に集中させなければならないのだ。
さもないと、このやっかいな品種は、
房に行くべき栄養分をすべて枝葉の生長のために使ってしまい、
肝心の実の方の品質は、
薄っぺらで青臭いだけの、情けないものに成り下がってしまう。

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もうひとつ、同書より。

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日本でカベルネ・ソーヴィニョンを栽培する際の最も重要なテーマは、
雨対策と窒素対策である。
このブドウはもともと樹勢が強いので、
水分と窒素肥料があると、
とんでもない勢いでツルを伸ばしがちで、
そうなるとブドウはひどく痩せた味に成り下がる。

そのため、ブドウ栽培家は、さまざまな工夫をこらすことになる。
雨対策のためには、樹上にビニールを張って雨を防いだり、
地面にビニールを張って雨の浸透を防いだり、
地下に排水設備を埋設して、
浸透した雨をできるだけ早く畑の外に流出させたり…と、
その努力には涙ぐましいものがある。

チッソ対策のためには、チッソ分を大量に消費する草、
例えばタンポポなどで地表を覆うようなこともする。

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北海道でカベルネがたくさん植えられる日は遠いのかな~。


メルロー

「ピノ・ノワール」「シャルドネ」、
そして「カベルネ・ソーヴィニョン」に続いて、メルローです。 これも赤ワイン用品種です。

実はこれ、僕がかなりハマった品種で。
ボルドーでもメルロー比率の高いワインが好きで、
もういっそメルローのみで作られているボルドー右岸、
これが大好きだったりします。



まずは「10種のぶどうで分かるワイン」より。

「メルローはもともと、
 カベルネ・ソーヴィニョンの補助品種としてブレンドされてきました。
 カベルネ・ソーヴィニョンの渋味や硬さを和らげる効果があるのです。
 また晩熟型のカベルネ・ソーヴィニョンは秋の雨にうたれて、
 収穫にばらつきがあるのに対して、
 メルローは早熟なので雨の前に収穫することができる、
 つまり安定して収穫できるのです。」

「もともとメルローは濃縮感のある果実味が一番の特徴になります。
 私はブルーベリーをメルローらしい香りだと認識しています。
 ブドウの成熟度や醸造技術による濃縮などにより
 違う部分もあるのですが、
 メルローはカシスというよりブルーベリーの香りになるものが多いのです」


うーん、僕はカシスだと思うけど(笑)
ま、それはさておき、果実味が豊かであるというのは確かです。
ワインを褒めるとき、「果実味豊か」と言っておけばOK、
というマニュアルがあるらしいですが(笑)

個人的に言わせてもらえれば、メルロー意外では使わないでほしい(笑)

爆発するような香りと、口いっぱいに果物をほおばっているような感じ、
これは数あるブドウ品種の中で、メルローにしかない特徴だと思ってます。 

「プラム」と表現されることもある。
みんな言うことは違うけど、やっぱり果実感はハンパない。

ワインを飲み始めたとき、
ブドウでできたワインから、違う果物の香りがすることが面白くて、
すごく興味を持ったことを覚えています。

そういう意味でも、ワインの世界の奥深くに誘ってくれたのは、
このメルローと言えるでしょうね。 

これは北海道富良野の多田農園で撮らせてもらったメルロー。
それほど種類は多くないですが、
北海道でもメルローの造り手はいます。

しかし、国内でも長野県を筆頭とするメルローの産地に比べれば、
まだまだ質も種類も物足りなく思っています。

自分で作るのなら、このメルローでフラッグ・シップが作りたいな。
できるかな。



さておまけに「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。
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日本では、現在、長野県産のメルロの品質が
急速に良くなってきている。
今後、日本におけるこの品種の重要性は
ますます高まっていくに違いない。

ちょっと意外かもしれないけれど、
実はかつて長野県では、
メルロはうまく栽培できないのではないかと思われていた。

冬の寒さが厳しすぎるのである。
吹きすさぶ寒風にさらされたメルロの樹は、
しばしば春になっても通常通り芽生えてくれない、
いわゆる「眠り病」にかかることが多かった。
眠り病で、発芽が何週間も遅れてしまった樹からは、
当然、通常の収穫は望めない。

その後、長野県のメルロ栽培に一気に加速がついたのは、
眠り病が、冬の間、幹を稲わらで巻いてやるだけで
防げることが発見されてからである。

藁巻きひとつで話がすむならば、
春から秋にかけての冷涼な気候は、
メルロには最適だったし、
水持ちのいい粘土質土壌も、この品種にむいていた。

というわけで、現在では、熱心な栽培家の努力が実って、
相当なレベルのメルロが収穫され始めている。

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これが2007年の話。
今はもっとレベルが上がっています。
北海道も続いていかないと!

カベルネ・フラン

ブルゴーニュの赤:ピノ・ノワール、白:シャルドネと来て、
ボルドーの赤:カベルネ・ソーヴィニョン、メルローに続き、
最後の赤品種、カベルネ・フランです。

地味な存在で、ブレンド比率で言うと5%くらいです。
でも、無くてはならない。
そんな、不思議な存在です。

カベルネ・フランを混ぜる必要があるのかどうか。
たとえばコーヒーに、ミルクを少し入れるか入れないか、
それくらいの違いがあります。

カベルネ・ソーヴィニョンがコーヒー、
メルローは砂糖、
カベルネ・フランがミルクのイメージ。
(あくまで僕の個人的なイメージですよ)

カベルネ・ソーヴィニョン単一のワインもありますが、
それだと少しあたりがキツイ。
(ブラック・コーヒーと同じ感じですね。)

そんな時に、ボルドー・セパージュ(ボルドーの比率)は、
なんともほっとするんですよね。
やっぱ、飲みやすいし、誰にでも受け入れられる。

お、我ながらうまいたとえではないだろうか。
(ただしメルロー単一の赤ワインはあるが、
 砂糖だけで食べることはないな…)

そういえば、ブルゴーニュ好きには紅茶好きが多く、
ボルドー好きにはコーヒー好きが多いと聞いたことがある。
関係しているのかな?(笑)

何はともあれ、この5%の存在。
これが欠かせないのがワインの不思議なところです。

最後に「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。

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このブドウのもう一つの産地は、
ボルドーから多少北に位置するロワール地方である。

この品種が冷涼な気候を好むらしいという事実に目を付けた
修道院長のブルトンという人物が、
17世紀にボルドーから苗木を持ち込み、
そのもくろみ通り、
この地方を代表する赤ワイン用ブドウとして成功を収めたのである。

その功績に敬意を表し、ロワール地方では、
カベルネ・フランは、しばしばブルトンと呼ばれている。
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カベルネ・フラン単一で作られるワインもあるんだとか。
飲んだことないし、ぜひ試してみたいな~。

セイベル

セイベルの名がつくブドウ品種は複数あって、
日本語のページだと、

・欧州系のフランス交配品種で樹勢が強い。対病性に優れている。
・フランス人アルベール・セイベル(Albert Sibel)によって生み出された。
・赤ワイン用品種はフランスで一時代流行したが、今はほとんど見られない。
・現在はイギリスやアメリカ、カナダなどで栽培されている。
・セイベル5455というように育種番号つきで呼ばれる。
・日本で栽培されている5279、9110、10076は白ブドウ、13053は黒ブドウ。

くらいの情報しか出てこないので、
英語版のウィキペディアで調べてみました。
結構勉強になったので、僕による和訳を載せます。
誤訳の可能性は(結構)あるので、
文末に英語版そのものも掲載しておきます。
ミスがあれば教えてください~。

以下、和訳。
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セイベルと呼ばれる品種群は、
アルベール・セイベル氏によって生み出された、
病気耐性を増進することを目的として、
ヨーロッパ系とアメリカ系の品種を交配させてできた
一群の品種たちをいう。

セイベルは1950年代を通してフランスで広く栽培されたが、
フランスのワイン法により、これらのハイブリッド系の品種が
アペラシオン・ワインを名乗れないと決められたことにより、
近年はほとんど見られなくなってしまった。

それらのブドウ品種は、テーブルワインのブレンド用として、
あるいは商業的なワイン用として使用されている。
ニュージーランド、イギリス、カナダなどでは、
いまだにセイベルが植えられている。

非常に重要な事実として、
セイベル氏によるハイブリッド品種は、
4つの共通する祖先となる品種がある。

ヨーロッパ系(ヴィティス・ヴィニフェラ)の2種、
アラモン(Aramon)とアリカンテ・ブーシェ(Alicante Bouchet)、
1種のアメリカ野生種としての
イェーガー70(ルペストリスとリンシクミの交配品種)
そして1種の台木用品種、
AxR1(アラモンとルペストリスの交配品種)である。

セイベル氏は交配により生まれた品種を、
さらに交配することにより、1万種を超える交配品種を生みだした。

しかし前述の4種の原品種は変わらないため、
大きな意味では遺伝子系統は同じと言うことができる。



セイベル1 …マンソン(Munson)とヴィニフェラ(どの種かは不明)の交配品種
セイベル29 …マンソン(Munson)とヴィニフェラ(どの種かは不明)の交配品種
セイベル30
セイベル99
セイベル405
セイベル452 …アリカンテ・ガンジン(Alicante Ganzin)とセイベル1の交配品種
セイベル788 …SicilienとClairette Dorée Ganzinの交配品種
セイベル793
セイベル867…ノア (Noah)とヴィヴァレ(Vivarais)の交配品種
セイベル880
セイベル1000 …別名ロゼット(Rosette)
セイベル1020 …別名フロット・ルージュ(Flot rouge)
セイベル2003 …別名ヴィヴァレ(Vivarais)
セイベル2007…別名アラモン・ドゥ・ガード(Aramon du Gard)
セイベル2510…別名Cinsaut Seibel
セイベル2524
セイベル2653…別名Flot d’Or
セイベル2679…TriumphとAlicante Terras 20の交配品種
セイベル2859 …別名Le Bienvenu
セイベル4199
セイベル4461
セイベル4595
セイベル4643…別名Roi des Noirs
セイベル4646…別名Le Pourpre
セイベル4986…別名Rayon d’Or 
  アラモン・デュ・ガード(セイベル2007)とセイベル405の交配品種
セイベル 5001…別名Florental
  セイベル2510とSeibel 867の交配品種
セイベル5163
セイベル5279…別名Aurore 
  セイベル788とセイベル29の交配品種
セイベル5351…セイベル880 とセイベル2679の交配品種
セイベル5409…別名グロワール・ド・セイベル
  セイベル867とセイベル452の交配品種
セイベル5410
セイベル5455…別名Plantet
セイベル5474…セイベル405とセイベル867の交配品種
セイベル5487…別名Le Redessan
セイベル5575…別名Le Rubis
セイベル5656…セイベル4595とセイベル4199の交配品種
セイベル5898…別名Rougeon
セイベル6150…(a crossing of Seibel 405 and Flot rouge)
セイベル6268…セイベル4614とセイベル3011の交配品種
セイベル6468…セイベル4614とセイベル3011の交配品種
セイベル6905…別名Le Subéreux
セイベル7042 …セイベル5351とセイベル6268の交配品種
セイベル7053…別名Chancellor
セイベル8216…セイベル5410と5001の交配品種
セイベル8357…別名Colobel
セイベル8665
セイベル8724
セイベル8745…別名Seinoir
セイベル9110…別名Verdelet
セイベル9549…別名De Chaunac
セイベル10173…別名Ambror
セイベル11803…別名Rubilande
セイベル10878…別名Chelois
セイベル13053…別名カスケード(Cascade)
   セイベル7042とグロワール・ド・セイベル(セイベル5409)の交配品種
セイベル14514…別名Dattier précoce de Seibel
セイベル14596…別名Bellandais

以下、英語版ウィキペディアより引用。
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“Seibel grapes”

Seibel grapes are a group of wine grape varieties 
which originated with the work of Albert Seibel 
crossing European grape with American grape species 
to increase disease resistance. 

They were planted widely in France during the 1950s 
but have seen decline in recent years 
because French wine law proscribes hybrid grapes 
in appellation wine. 

The grapes are still commonly used as blending grapes 
in table wine and mass commercial wines. 
New Zealand, England, and Canada also have plantings of 
Seibel grapes.

Of great importance is the fact that almost all of
Albert Seibel’s hybrid grapes 
were descended from only four parent grapes: 
two European (Vitis Vinifera) grapes: 
Aramon and Alicante Bouchet … 
one wild American grape: 
Jaeger 70 (V. Rupestris x V.Lincicumii)… 
and one rootstock, AxR1, 
which was created by crossing Aramon 
with a wild American Vitis Rupestris.

Although Seibel bred tens of thousands of grapes, 
he did so almost entirely by continually crossing 
and re-crossing his original varieties, 
all of which were descended from the original four vines, 
so the basic gene pool of his collection remained largely unchanged




Seibel 1 (a Munson and unknown Vitis vinifera crossing)
Seibel 29 (a Munson and unknown Vitis vinifera crossing)
Seibel 30
Seibel 99
Seibel 405
Seibel 452 (a crossing of Alicante Ganzin and Seibel 1)
Seibel 788 (a Sicilien and Clairette Dorée Ganzin) crossing)
Seibel 793
Seibel 867 (a crossing of Noah and Vivarais)
Seibel 880
Seibel 1000 Rosette
Seibel 1020 Flot rouge
Seibel 2003 Vivarais
Seibel 2007 Aramon du Gard
Seibel 2510 Cinsaut Seibel
Seibel 2524
Seibel 2653 Flot d’Or
Seibel 2679 (a crossing of Triumph and Alicante Terras 20)
Seibel 2859 Le Bienvenu
Seibel 4199
Seibel 4461
Seibel 4595
Seibel 4643 Roi des Noirs
Seibel 4646 Le Pourpre
Seibel 4986 Rayon d’Or (a crossing of Aramon du Gard and Seibel 405)
Seibel 5001 Florental (a crossing of Seibel 2510 and Seibel 867)
Seibel 5163
Seibel 5279 Aurore (a crossing of Seibel 788 & Seibel 29)
Seibel 5351 (a crossing of Seibel 880 and Seibel 2679)
Seibel 5409 Gloire de Seibel (a crossing of Seibel 867 and Seibel 452)
Seibel 5410
Seibel 5455 Plantet
Seibel 5474 (a crossing of Seibel 405 and Seibel 867)
Seibel 5487 Le Redessan
Seibel 5575 Le Rubis
Seibel 5656 (a crossing of Seibel 4595 and Seibel 4199)
Seibel 5898 Rougeon
Seibel 6150 (a crossing of Seibel 405 and Flot rouge)
Seibel 6268 (a crossing of Seibel 4614 and Seibel 3011)
Seibel 6468 (a crossing of Seibel 4614 and Seibel 3011)
Seibel 6905 Le Subéreux
Seibel 7042 (a crossing of Seibel 5351 and Seibel 6268)
Seibel 7053 Chancellor
Seibel 8216 (a crossing of Seibel 5410 & 5001)
Seibel 8357 Colobel
Seibel 8665
Seibel 8724
Seibel 8745 Seinoir
Seibel 9110 Verdelet
Seibel 9549 De Chaunac
Seibel 10173 Ambror
Seibel 11803 Rubilande
Seibel 10878 Chelois
Seibel 13053 Cascade (a crossing of Seibel 7042 and Gloire de Seibel)
Seibel 14514 Dattier précoce de Seibel
Seibel 14596 Bellandais

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マスカット・ベーリーA

マスカット・ベーリーAという品種です。赤用ですね。
たまに「ベリーA」と表記されていることもありますが、
berryではなく、Baileyです。

これは昨日の「甲州」と違い、日本が原産とは言えません。
日本人が、日本の風土でもワインを造るために交配した品種です。
母方はアメリカ系ヴィティス・ラブラスカのベーリー種、
父方はヨーロッパ系ヴィティス・ヴィニフェラのマスカット・ハンブルク種。
日本でもおなじみのマスカット系の血を引くのに、珍しく黒ブドウです。

まずは、「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。

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大正11年(1922年)、こういう国でワインをつくりたいなら、
(引用者注:梅雨→蒸し暑い夏→台風という気候の日本)
なによりもまずブドウ品種を改良するしかない、
という大英断をくだしたのが、
後に「日本のワイン用ブドウの父」と
讃えられることになる川上善兵衛だった。

善兵衛は、日本の厳しい気候にも耐久性のある
アメリカ種のブドウを母に、
品質的に望ましいヨーロッパ種のブドウを父にして
交配を繰り返し、実に1万種を超える苗木を育て上げた。

(中略)

実際、1万種のうち、実がなったのは1100種類ほどしかなく、
その1100種をすべて試験醸造したところ、
有望品種として残ったのは、40種類ほどしかなかったという。

(中略)

ワインに醸すと、独特の果実香と、
ハーブを思わせるスパイシーな風味、
穏やかなタンニンを特徴とする、なかなか面白いものになる。

(中略)

ただし、日本のワイン業界全体の流れを見る限り、
残念ながら、このブドウは、その潜在力を
100%引き出されてはいない状況にあると言っていい。

日本で唯一の固有品種である甲州種が、
ここにきてにわかに品質を開花させつつあるのに対して、
日本生まれの赤ワイン用品種である
マスカット・ベーリーAの現状は、ちょっぴりさみしい。

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僕も何本かマスカット・ベーリーAは飲んでいますが、
その多くは確かに野暮ったい感じの、
味わいの厚みが薄い赤ワインでした。

一方で、ピノ・ノワールを思わせる、
イチゴの香りを感じる名品もありました。

以下、ワイナートの記事より。

「メルロなどのヴィティス・ヴィニフェラから得られるワインと比較すると、
ベーリーAのワインに含まれるタンニン分は少ない。
そのため、比較的穏やかな渋味となる。

(中略)

コンコードやナイアガラに多く含まれる甘い香りは、
フォクシー・フレーバーとよばれ、
その評価は賛否両論に分かれる。

これはラブラスカの品種の特徴とされる、
アントラニル酸メチルというにおい物質が原因とされてるが、
コンコードやナイアガラに比べると、
ベーリーAに含まれるこの物質は非常に少ない。
もっともこれこそが、日本人に好かれる香りだという意見も根強い。

イチゴ様の香りとしては、フラネオールという物質が
その香りに貢献し、有効積算温度との関係が研究されている。

また、ブドウの房に光が当たると果皮に含まれる
アントシアニン(色素)の量も増加する。
言い換えれば、房に多くの光を当て、収穫を遅くしたベーリーAは、
色調が濃く、フラネオールも多く含むと言える。
さらに完熟させると、黒系果実のニュアンスも出てくると言われる。」

世界のコンクールでも、日本の白ワイン、
特に甲州種は注目を浴び、世界のソムリエも積極的に試飲するという。
それに対して、日本の赤ワインはまだまだ評価を上げている途上。

日本生まれのマスカット・ベーリーAが、
赤ワイン用ブドウ品種の最高峰、ピノ・ノワールのような存在になるか。
まだまだ栽培に関しても醸造に関しても工夫の余地がありそう。
楽しみな品種と言えそうです。

白ブドウ

シャルドネ

写真は札幌の「八剣山ワイナリー」さんで撮らせてもらったもの。

シャルドネの解説は、
今回も「10種類のぶどうで分かるワイン」という本より引用。

「間違いなく世界最高峰の、
 偉大な白ワインを生み出すのが、このブドウ品種です。

同時に世界中に広まっており、いやあまりに広がりすぎ、
『シャルドネはもう飽きた』
『ABC-Anything But Chardonnay(シャルドネ以外ならなんでも)』
と言われたこともありますが、
秀逸なシャルドネによるワインは他の追随を許すことはありません。」

いや~、微妙な褒め方ですね(笑)

フランス・ブルゴーニュ地方を代表する、
赤のピノ・ノワールと白のシャルドネなのに、
どうしてこうも性格が違うのか。

シャルドネは本当に従順。
「あなた色に染まります」的な色彩が強い(笑)
産地によって本当に違った顔を見せる。

ただ、大きく分けると、
①南方系の、アロマティックでボリュームとコクがあるタイプ。
②北方系の、シャープでピュアなスッキリなタイプ。
の2つに分かれる。

日本では長野を中心とした②タイプが美味しい。
日本の小川の水のようなスッキリ感。
何物も邪魔しない、寄り添うタイプの白。
ワインは、料理と合わせて…なんてことを考えなくても良い。
いてくれるとほっとするものですね。

初心者の方に勧めるなら、入門編としてシャルドネは最適でしょ。

あとは、ベテランになってくれば、
いろんな国のシャルドネを楽しむのも良い。
国や地方によってシャルドネは顔を変えるので。
ワインのラベルに「Chardnnay(シャルドネ)」と書かれる、
いわゆるヴァラエタル・ワインの始まりも、
このシャルドネがはしりです。

逆に言うと、飲んで「あ、これはシャルドネだね」みたいな、
そういう感じにはなかなかならない…。
そりゃあ、ブルゴーニュのシャルドネなら分かりますが、
それ以外の地域となると、「え?これ、南アのシャルドネなの?」
みたいな感じで、毎回新鮮な驚きがある。

ちなみに、僕がワインにドハマリするようになったのも、
シャルドネ100%でできた、「サントーバン」という白ワインでした。

ワインをちょこちょこ飲んで、
「へぇ、意外と美味しいかも」と思い始めた頃、
①タイプのコクと重厚感のある白ワインを飲んで、
頭をガツンと殴られたように感動したことを覚えてます。
(詳細はコチラ。上から2番目のワインです)

確かにたくさん飲んでいると、
確固たる個性が無くて、飽きてしまう気持ちもわかりますがね。
それでも、やっぱりここが出発点で、ここに戻ってきてしまう。
原点のような、色彩のないワインです。

不思議なブドウ品種です(笑)

最後に、「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。

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さて、シャルドネの個性に、最も強く影響を与えるのは気温である。
本家のブルゴーニュを例にとると、
最も冷涼な気候のシャブリから南に下るにつれて、
まず酸味の構成が、
(鋭く、爽やかな味わいの)リンゴ酸中心から、
(まろやかな酸味の)酒石酸中心に変わっていく。

(中略)

さて、北から南に移るにつれて、香りの質も変わっていく。
わずかに青みを帯びたライムの香りに始まり、
レモン、青りんご、あんず、パイナップル、マンゴー、
そして最終的には桃を思わせる甘く優しい香りへと変化していく。

(中略)

このブドウの場合、畑での世話は、真っ正直なまでに
ストレートに品質に反映されていく。

(中略)

収穫の時期の見極めも非常に大切である。
この品種の場合、完熟の最後の段階で、
急速に酸味が失われる傾向にあるので、
熟したうまみと酸味のバランスのとり方が難しいのだ。

果実の成熟期に、
房そのものに太陽の光を当てるかどうかも、
香りの質を大きく変える。

房が日陰になると、なんとなく青臭いニュアンスが生まれる。
北のシャルドネの中に、レモンではなくライムを思わせる
香りのワインが生まれるのは、たぶんそのせいである。

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ソーヴィニヨン・ブラン

ボルドーの白と言えば、ソーヴィニヨン・ブラン。

まずは、「10種のぶどうでわかるワイン」より。

「ソーヴィニョン・ブランはアロマティックな品種の代表とも言える存在です。
 ニュートラルな個性を持つシャルドネとは対極にあります。

白ワインはブルゴーニュが一番と言う認識からだったのでしょうか。
以前は『白ワインはドライに限る、フルーティーなワインは初心者向け』
といったイメージがありました。

フルーティーな個性のソーヴィニョンは、ドライなシャルドネの陰で、
貧乏くじをひかされてしまったとも言えるでしょう。」

刈り込んだ後の芝生のような、青い草の香り。
これが賛否を生んでしまったわけですね。
今は栽培技術の進歩で、この香りを抑えたワインも多いし、
やっぱり酸がきれいに出る気がするので、僕は好きです。

今ではトロピカルな香りのソーヴィニョン・ブランも増えてきて、
人気も急上昇している。
いわば、シンデレラ的な存在です。

個人的には、アロマが強い品種は結構好きで、
特に夏場はケルナーとかソーヴィニョン・ブランは欲しくなる。
ちょっと冷やしすぎたくらいで(もういっそ冷蔵庫に入れておいて)、
そこから自然と温度が上がっていくのに任せて、
ちんたら飲み続けていくのが楽しい。

香りは温度が上がるごとに強く感じるので、
その変化を追いかけつつ、さて今日は何を食べようか、
なんて考えている夕暮れ時が最高に幸せですね(笑)

ま、そのままキッチン・ドリンカーになるパターンですが。
シャルドネやリースリングなんかでは、
なかなかそうはいかない(気がする)。
ソーヴィニョン・ブランは、気さくな品種なんです。

最後に。
「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。

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この品種に特徴的な柑橘系の香りは、
寒い産地から暖かい産地になるにつれ、
ライム→レモン→オレンジとゆるやかに変化していき、
それとともに酸の印象も次第に柔らかく優しくなっていく傾向がある。

香りのもう一つの特徴である青草のニュアンスは、
ブドウの完熟度と、房に直接太陽の光が当たるかどうかで、
大きく変化する。

未熟なブドウや、収穫量が多すぎる畑のブドウ、
あるいは完全な日陰に実ったブドウの場合には、
それこそピーマンを思わせるような青臭さが強烈に香る。

しかし、その青さはブドウが熟すにつれて柔らかくなり、
さんさんとした太陽を浴びた完熟果の場合には、
まったく姿を消してしまうこともある。

ただし、このニュアンスが完全に消え、
オレンジ様の甘い香りだけが漂うようになってしまうと、
残念ながらつまらないワインに落ちぶれてしまいがちである。
そのあたりのバランスが難しい品種なのである。

さて、ソーヴィニヨン・ブランには、以上の説明とは
ちょっぴり別系統にある一群のワインがある。
ボルドー大学のD・デュブルデュー教授と、
日本人研究者の富永敬敏博士が指導している
「チオール」と言う成分に注目して作られたワインたちだ。

(中略)

グレープフルーツ、マンゴー、グァバ、パッションフルーツなどを
思わせるトロピカルフルーツ系の甘い香りが、
いくつかの特殊なチオールに由来していることをつきとめたのだ。

(中略)

チオールが銅に弱い以上、
畑でボルドー液を使わない方がいいのは自明の理だ。
ボルドー液は、硫酸銅と生石灰の調合剤だからだ。
(もっともソーヴィニヨン・ブランという品種は、
ウドンコ病やベト病に極端に弱いため、
ボルドー液を使わないためには、
他の防カビ・防菌剤を使用する必要がある。
つまりチオールを重視したソーヴィニヨン・ブランを
「有機栽培」で作ることは難しいということだ。
ボルドー液は有機栽培で唯一認可されている農薬なので)

(中略)

さらにチオールは(というか、一般に香りやうまみの成分は)
果汁よりも果皮の中に多く含まれているので、
「スキンコンタクト」と言う技法が重要になる。
ブドウをすぐに絞ってしまわずに、
皮と種を低温化で果汁に一定時間浸しておくのだ。
こうすることで皮からの香りの成分を十分に抽出し、
しかる後に圧搾し、発酵に入るというわけだ。

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ミュスカ

「ワイン紀行」という本に出てきたので。

ミュスカデはブドウの品種名であると同時に、
ワインの名前でもある。


ミュスカデはフランスの北西部、
ロワール川に沿ったエリアで造られる。
特に大西洋に注ぐ河口、ナントという都市が中心。


ミュスカデは「シュール・リー( sur lie )」、
「澱の上で」と呼ばれる製法でも有名。


以下、引用。

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この品種は、「ブルゴーニュのメロン」とも呼ぶ。
もとはといえばブルゴーニュ地方から移植されたブドウだ。
実は青い。
これにはいささかの話がある。

1709年にロワール河一帯は寒波に襲われた。
大西洋も凍るという大寒波だった。
そのときまでのブドウは全滅に近い打撃を受けた。
その後、この品種が選ばれ、流域の小石だらけの斜面に植えられた。

(中略)

もともとムスカデというワインは、北側の斜面でとれるブドウを良しとする。
日照量の少ない年を良しとする。
暑い夏だと9月を待たずにブドウを摘むこともある。
太陽は甘さを作る。
ブドウの糖分がアルコール度を高める。
アルコール度の高さが良質のワインを作る条件ではないと考えるわけだ。

青い実を選んでゆっくり発酵させる。
11月頃濾過して瓶に詰める。
空気の接触を少なくするために、
つまり味や香りを変えないために、
樽はステンレス製を使い、木製は使わない。

その間ブドウは発酵して、
その糖分がアルコールと炭酸ガスに分解し、
ブドウのジュースはワインになる。


ところがこの「澱の上で」のムスカデは、
澱と一緒に冷たい醸造倉に寝かせて、越冬させる。

春が来る。
気温の上昇とともに底にたまった沈殿物が上がってくる。
その寸前のタイミングをつかまえて上澄みを瓶に詰める。
冬の醸造倉の5度だ。

発酵のときにできた炭酸ガスがワインの中にそのまま保存されるのを許す。
その炭酸ガスはワインといっしょに瓶に詰められる。
これが最初に私がグラスに見た“一粒の真珠”の正体だったのだ。

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そして、漫画「神の雫」でも紹介された、
ミュスカデの名手、ルイ・メテロ氏のワインの造りについても。

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彼らが求めるのはエレガントなムスカデである。
ムスカデはアペリティフとして食前に、
また食事の始めに飲まれるワインである。

香りが強すぎてはいけない。
アルコール度が高い必要もない。
従って太陽は求めない。

醸造過程では極力酸化を避けて、
ワインの若さ、さわやかさ(フレッシャー)を積極的に出す。

1984年は天候が悪く、ボルドーでは絶望的といわれたが、
その年、ムスカデ地方では絹レースのように繊細でエレガントなワインができた。

ボルドーの小ミレジムはムスカデの大ワイン年だ。

「今年は9月8日に収穫を始めた。
 収穫開始はフランスのなかでいちばん早い。 
 ほんとうは、もう1、2日早く摘みたいが、
 収穫開始日はAOCの規定があるのでそれはできない。」

メテロ方式は太陽を避ける。
ムスカデぶどうの葉は大きく、葉のふちにはギザギザが少なく、
木の背丈は高くないが枝があちこちにのびている。
ブドウの葉はパラソルで、実を太陽から守る。
このパラソルの下でブドウの実はやわらかく熟す。


アルコール度は11度を目指す。
1リットル中の酸味が6グラム。
糖分0.5~0.8グラム。

ふつうは白でも1リットル中、3グラムぐらいの糖分が残っている。
メテロはドライな白が目標だから、この残留量はよろしい。

醸造の課程でもワインの若さ(フレッシャー)を取り出すために
徹底的に空気に当てない。
酸化を避けるのだ。


まず醸造タンクは高いところにある。
底に厚さ10センチくらいの澱がたまる。
底からその10センチの上あたりに栓があって、
チューブを通ってワインはタンクから直接、
瓶に流れ落ち、瓶に詰まる。

ふつうはワインを澄ませるためにフィルターで漉すが、それもやらない。

また「澱の上」については、
まず発酵の温度は自然に任せると28~30度に上がる。
温度が高いと酵母が疲れる。
これは香り(アローム)を失うことにつながる。


温度は18度~20度に冷やし、あとは5度まで自然に下がる。
冬のカーブの自然温度と自然の引力でワインは自然に上下に対流する。
澱に含まれている物は全部取り出される。
つまり香りを取り出すために澱をおく、
ワインは澱からすべてを吸収。

澱はいわばワインに栄養を与えつつ、
ワインの中から酸素を摂って衰微しながらも生き続ける。

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最近、フランスの北部、寒冷地でのワイン造りに興味がある。
もちろん、北海道でのワイン造りとの共通点や、
北海道のワインの今後の可能性を見るためだ。

というわけで、
アルザス、ロワール、シャンパーニュ、ブルゴーニュ北部、
このあたりの著述を探っていきたいと考えている。
そういう意味では、非常に有意義な1冊だった。

リースリング

どうでもよい話ですが、
僕はこれを「クリスマスリース」の「リース」と、
「ペアリング」の「リング」のアクセントで、
割と平板に「リースリング」と読んでいたのですが、
一般的なのは「【リー】スリング」と、
頭にアクセントを置くのが普通みたいですね。

ま、どっちでもいいですけど。

このリースリングの紹介も、
「10種のぶどうで分かるワイン」より。

「『繊細さ』という表現が、
 リースリングによる白ワインを表すのに最もふさわしいでしょう。
 そして繊細でありながら長期熟成が可能という
 高いポテンシャルを持つ点においては、
 他に比類なきブドウ品種と言えます。」

「きめ細やかな酸味がもたらす上品さと
 貴腐や氷果(アイスワイン)による
 芳醇な甘みを備えたドイツのリースリングは、
 19世紀から20世紀初頭には、
 フランスの偉大な赤ワインと同様の評価を受けていたといいます」

ところが、高い人気から大量生産されるようになって、
結果品質を落とし、さらに甘口ワインが不人気になる流行から、
だんだん忘れ去られるようになっていったわけですね。

しかし近年、リースリングの辛口が再注目され、
特に冷涼地では、リースリングの栽培こそが、
品質の証明であるとまで言われるようになっています。

「高貴」という表現が似合うのは、
赤ワイン用のピノ・ノワールと、
そして白ワイン用の、このリースリングじゃないかと思う。

最後に、「ワインを愉しむ基本大図鑑」より。
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言うまでもなく、リースリングはドイツで最も重要なブドウ品種である。
残念なことに、近年の日本ではドイツワインの人気が今一つなのだが、
優れたリースリングワインの味わいは、
本当に理屈抜きに美味しい。

白い花や蜂蜜を連想させる優しく気品のある香りと、
透明感あふれる爽やかな酸味、
そして、飲むものを陶然とさせるみずみずしい甘味…。

(中略)

リースリングを他の品種と峻別する個性が、
(*引用者注:深み、華麗さ、気品以外に)
もうひとつある。

それは、故郷の風土や天候、造り手のポリシーなどを、
鏡のように映しだす特別な能力に他ならない。
この能力が際立つ品種は、
リースリング以外にはシャルドネしかなく、
その事実が、この二つの品種を
白ワイン用ブドウの双璧にしているのである。

(中略)

残念ながらドイツ以外の土地で作られたリースリングは、
多くの場合欠点の方を鏡のように映しだしてしまう。

特に、暖かい土地で作られたリースリングは、
酸味がぼやけ、果実味からもみずみずしさが失われがちで、
何も苦労して植える必要はなかったんじゃないの、
と言いたくなるようなものが多い。

(中略)

そういう中で、例外的に素晴らしいワインを生み出しているのが、
フランスのアルザス地方と、オーストリアのヴァッハウ地方である。
———————————————————————————————-

寒冷地で本領を発揮するリースリング。
日本で育てるなら、北海道じゃないかと思うんだけど、
どうだろうか??

甲州

また、いつも品種紹介の冒頭に使っている、
「10種のぶどうでわかるワイン」にも、2種とも紹介されています。
まずはそこから。

——————————————————————————————-
甲州は世界的に見ると栽培面積はわずかで、
本書で紹介する白ワインの5つのブドウ品種に入れるには、
シャルドネやリースリングに比べるときわめてマイナーです。
しかし、日本原産のブドウで、独自の個性を持ち、
日本人としてワインを語るにおいて、
日本の固有のブドウを知っておくことは大切なことですから、
ここで取り上げたいと思います。

ワインにもっとも適したブドウは、学名「ヴィティス・ヴィニフェラ」という
ヨーロッパ原種のものです。

(中略)

甲州は、日本のブドウ品種でありながら、
ヴィティス・ヴィニフェラなのです。
古くから山梨で栽培されており、
ワイン用としてだけでなく、生食用として現在でも出荷されています。

(中略)

甲州は赤紫色をしています。
つまり、純粋な白ブドウではありません。
ヨーロッパにもこのように果皮に色を持ったブドウはあります。
アルザスのピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネールなどがそうです。
こういったブドウを「グリ(灰色)」と呼びます。
白(ブドウ)と黒の間で、グレーと言うことです。

(中略)

日本ワイン全般に言えることですが、甲州の香りは控えめです。
日本人気質のようですね。
色も大変淡く、かおりもどちらかといえばニュートラルな印象で、
味わいも突出した味覚要素は特になく、コンパクトな広がりのボディ。
これだけ聞くと、魅力があるようにはあまり思えませんよね。

甲州は実は色ブドウとしては特有の個性を持っています。
それはフェノール類を豊富に含んでいるということです。
フェノール類とは、つまり渋み成分です。
ということは、甲州に突出した味覚要素がないというのは正しくはなく、
むしろ白ワインとしては稀有な個性を持っていることになります。

————————————————————————————–

ただ、これまでの甲州を使ったワインには、
そういった渋味と言うかコクを前面に出すものが少なく、
僕自身の感想としても、「小川のせせらぎ」のように、
清冽で料理の邪魔をしないワインというイメージでした。

それが最近では、甲州の個性をアピールする、
そんなつくりのワインも増えてきているようです。

続いて、ワイナートの記事より。

「甲州には、ソーヴィニヨン・ブランに含まれるグレープフルーツ様の
柑橘を思わせる香りと同様の香りが見つかっており、
この香りは、ブドウ果粒内で香らない形(香りの素・前駆体)として
存在している。

(中略)

また、ほかの白用品種に比べて、燻製香をもたらす物質も
薄紫色の果皮に多く含まれる。
さらには、果皮を一緒に発酵させる醸し発酵の
オレンジ色の甲州ワインには、
リンゴのコンポートの香りが感じられることが多い。
これはβダマノセンという香りを発する物質が影響していると言われる。

甲州ブドウの渋味、エグミに関しては、
生産者により受け止め方が異なる。
味わいを構成する重要な要素であるという考え方の一方で、
良し悪しを一概に決められないという考え方もある。」

この文面からすると、
ソーヴィニヨン・ブランに近いということが言えそう。

前半にある香りは、ソーヴィニヨン・ブラン特有の、
「チオール」と呼ばれる物質が原因。
(詳しくはソーヴィニヨン・ブランの項を参照)

燻製香に関しても、ソーヴィニヨン・ブランは、
別名「フュメ(燻製の)・ブラン」とも呼ばれるほどで、
燻製の香りがしたり、燻製香と相性が良いと言われたりする。
(僕個人的には、ソーヴィニヨン・ブランに
樽香以外の燻製香を感じたことは一度もないけれど…。)

となると、ソーヴィニヨン・ブランに近い個性を持っていて、
なおかつ甲州独自の味わいとなるのは「渋味」であると言えそう。

また、「ワインを愉しむ基本大図鑑」には、
これまで甲州を使ったワインは、
渋味とボディの弱さを隠すために甘口に仕上げることが多かったが、
最近は、
①チオールを活かす醸造
②氷結濾過を利用する醸造
③排水の充実により、成分の凝縮度を増す栽培
に関して紹介してあり、最後はこう締めくくられている。

「日本の風土が生み出した、日本にしかないこの特別なブドウから、
いつの日か完璧なワインが生み出されたときに、
初めて日本のワイン文化は、本当の根っこをもてるのだと、
僕は常々思っているのだが、その夢が実現する日も、
もはや、そう遠くはないのかもしれない」

日本オリジナルのワイン。
それを支える甲州種。
楽しみな存在です。

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