「アトラス・オブ・ワイン」と、
「アンリジャイエのブドウ畑」の内容を重ね合わせて。
フランスのワイン作りの1年
【1月】
・ブドウ畑
11月半ば~12月15日予備剪定。
結果枝と結果母枝をハサミで切り取る。
本剪定に向け、枝は2~3本残す。
コート・ド・ニュイではこれを「デモンテ」、
コート・ド・ボーヌでは「エポンタージュ」と呼ぶ。
次に畑に出れば、針金から枝を外す。
本剪定は翌年の1月~3月にかけて。
伝統的には1月22日、
サン・ヴァンサンの日に剪定を始めると決まっていた。
今では12月に始めている。
もし雪が降らなければ、地表が凍り付くことも多い。
ぶどうの樹はマイナス18度くらいまで
気温が下がっても生き延びてくれるだろう。
・ ワイナリー
目減りするので、
新酒の樽は絶えず満杯にしておかなければならず、
樽の口は、一日おきに亜硫酸水でふいてやらねばならない。
良く晴れて乾燥した日ならば、
何年か前のワインのボトル詰めをしてもよい。
ラベルを貼り、箱に詰めて出荷の準備をする。
【2月】
・ ブドウ畑
剪定が終われば、接ぎ木用の枝切りをし、根株に差し込み、
屋内の砂地に入れる。
近づいてきた春の屋外作業用の機械類も整備。
散布用の硫酸銅も注文。
・ ワイナリー
良く晴れた日、新月で北風が吹く(こうなると気圧が高くなる)と、
新酒をきれいな樽に移し替える澱引きが始まる。
大桶に新酒を集めて、「混和」させるのもこの頃で、
こうして成熟用の樽にはどれも同じワインが入るようにするのである。
【3月】
・ ブドウ畑
月の中頃、ぶどうの樹は休眠からさめ始める。
樹液が登り始め、芽を覆っていた茶色い薄膜が落ちる。
剪定は終わっている。
まず、土を深くすき起こして空気に触れさせ、
被せてあった土を除いて、ぶどうの基部をむきだしにする。
株の周りの土をほぐすことを「ブエシャージュ」と呼ぶ。
欠株が出て、植え直す場合、
接ぎ木苗は3月中に定植する。
・ ワイナリー
月末頃には、最初の澱引きは終わっている。
ぶどうの樹とワインとはなにがしか神秘的な共感を覚えるらしく、
樹液が登り始めると、ワインの第2次発酵が始まる。
目減りのないように、樽は満杯に。
ボトル詰め完了。
【4月】
・ ブドウ畑
ぶどう畑をきれいにする。剪定したときの切り屑は燃やし、
腐っている添え木は取り替える。
苗床で1年育てた接ぎ木を移植する。
早く木がゆっくりと生育することを祈らねば。
霜が良く発生し、雹が降ることもあるのだから。
状況を見て、結果母子誘引(アコラージュ)を実施。
生育にばらつきがある場合は、段階を追って行う。
・ ワイナリー
樽の中には空気と触れるどんな隙間もないように、
目減りをなくす操作は続けていかなければならない。
毎年、樽の側板を抜けて5%のワインが蒸発してしまうのである。
(これを「天使の分け前)と呼ぶ)
【5月】
・ ブドウ畑
1年で一番霜におそわれやすい時期。
晴れた夜にはぶどう樹の間にストーブを億必要もあるだろう。
こうなると、燃料の補給をするために徹夜するはめにも。
畑に2度目のすき起こしをして、雑草を除く。
これを「ルフュエ」という。
霜の心配がなくなる頃、つまり5月8日~10日にかけて、
エヴァジヴァージュ(エパンプラージュ)と呼ばれる、
従長枝除去を行う。
古い株の足下から生える葉を取り除くわけだ。
うどんこ病、ベト病対策の薬剤散布。
10日ごとに地下の茎から出た枝を取り除き、
ぶどう樹に樹液を登らせるようにする。
・ ワイナリー
出荷の時期。
月末近く、ぶどうの樹が開花する直前に2度目の澱引きをする。
【6月】
・ ブドウ畑
月の初め、気温が18度~20度に達した頃、ぶどうの樹の花が咲く。
大切なのは天候。
温和で変化の少ない天候が望ましい。
花が咲いた後、若枝を間引き、
いちばん状態のいい物をワイヤに結ぶ。
うどんこ病を防ぐために硫黄の粉末を散布する。
1回目の摘芯(ロニャージュ)を行う。
ブドウの樹の一番上の針金からはみ出した梢の端を切る作業。
・ ワイナリー
新酒の第2回目の澱引きを終え、
セラーにある前年までのワインの澱引きも行う。
暖かい天候に誘われて、当然蒸発も進んでいる。
側板の間からにじみだしがないか、すべての樽をチェックする。
【7月】
・ ブドウ畑
定期的にボルドー液を散布する。
雑草を防ぐため、3度目のすきおこし。
伸びすぎている枝を刈り込む。
こうしてぶどうの樹のエネルギーを結実に向けさせるのである。
・ ワイナリー
気温の高いときには出荷を止める。
セラーを涼しく保つのに全力を傾ける。
熱波におそわれ、蒸し暑い天気が続くと、
夜にセラーの戸を閉め切り、
硫黄をしみこませた布を燃やすことも必要になる。
ブドウの樹の生育は鈍る。
時間の余裕があれば、ボトル詰めの再開も。
【8月】
・ ブドウ畑
雑草は絶えず取り除き、ぶどうの樹の手入れを怠ってはならない。
赤ワイン用品種のぶどうの実は色づいてくる。
設備全般をチェックし、収穫に必要な機械類の準備をする。
ヴェレゾンの時期。
開花から45日でヴェレゾンに入り、12日で実が柔らかくなる。
ヴェレゾンから45日後には収穫が始まる。
・ ワイナリー
醸造桶(槽)とその年に用いる樽の点検をし、洗浄する。
月の半ば頃、ぶどうの樹の生育(発酵も)が再び始まる。
ボトル詰めは停止。
アルコール度の低い(したがって安定度の低い)ワインが
温かい天候で変質するかもしれないので、要注意。
【9月】
・ ブドウ畑
子供と小鳥はぶどう畑に立ち入り禁止。
ぶどう樹の手入れを続け、日が照ってくれることを念ずるのみ。
第3週目くらいにブドウの実が熟し、収穫が始まる。
一族郎党参集せよ。
・ ワイナリー
収穫に先立ち、ワインを作る場所をすっかり洗浄しておく。
圧搾機などの金属部分に、残らずさび止めのニスなどを塗っておく。
発酵用の大桶に水を満たし、木に水を吸わせて膨張させ、
完全に隙間のない状態にする。
【10月】
・ ブドウ畑
収穫はだいたい2週間続く。
そのあと堆肥(圧搾機のブドウの身と皮は申し分のない肥料となる)や
化学肥料を畑にまく。
新しく移植する樹のために土を深く耕しておく。
・ ワイナリー
新酒は発酵を続けている。
1年寝かせたワインの最後の澱引きを行い、
樽の栓はきっちりと閉め、
樽を1/4回転させて栓の部分が横に来るようにする。
この樽は2年目を過ごすためのセラーに移して、
新酒用のスペースを作る。
【11月】
・ ブドウ畑
長く伸びたぶどうの樹の枝を切り取り、集めて薪として使う。
施肥が完了。
ぶどう畑をすき起こして、ブドウの樹の基部に土を被せ、
霜から守るようにする。
・ ワイナリー
澱引きをし、
「清澄処理(泡立てた卵白を入れてワインの中に浮遊している澱をすわせて
底に沈殿させる濾過方法)」をしたワインをボトルに詰める。
実の成熟も良く、豊作の都市には、この時期に澱引きを行う。
不良年には、あと1ヶ月、澱の上に寝かせたままにする。
【12月】
・ ブドウ畑
雨が降り、斜面の表土を押し流すようなことがあれば、
土は畑全体に戻してやらねばならない。
ぶどう樹の剪定がクリスマス前、12月15日頃には始まることだろう。
・ ワイナリー
樽の目減り分は絶えず補填しておかねばならない。
何年か前のワインのボトル詰め作業もはかどる時期だ。
ぼちぼち気心の知れた友人と新酒の試飲でも始めるか。
「アンリ・ジャイエのぶどう畑」にもあるので、
カレンダーを作っていきたいな。
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