これも「ワイン紀行」という本より。
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アルザスはブドウの品種名をそのままワインの名前にする、
フランス唯一のワイン産地だ。
品種は8種。
アルザスワインのバラエティーは、この品種のバラエティーであり、
品種のバラエティーはすなわち地質のバラエティーだ。
ブドウ畑は南北に120kmある。
幅(東西)は平均して5~6kmの、
ライン川西岸の平野とヴォージュの東斜面からなっている。
まずこの土地がどのように形成されたかを知る必要があろう。
アルザス地方は、そもそも創世期が
きわめて複雑に入り組んだ土壌からなっているという。
土地の人が見てきたように語るには、
5億年前にはヴォージュの山々とドイツの黒い森は、
一つの大きな山であった。
あつい氷河に覆われていた。
そして2億年前に大雨が何日も何日も降り続き、
その山の一部が大沈下した。
そこへ海水が流れ込んできた。
水と一緒に土砂も運んできた。
だから石灰質の土には貝の化石があるんだ。
アルザスワインに石油の香りがするのもこのためだ。
3000年前になるとアルプスが大噴火した。
そしてライン平野ができた。
土壌は、
① ヴォージュ山脈は花崗岩でできている。
石から砂状までの温まりやすい土質だから、ブドウは早く熟す。
傾斜65度、標高400mどまり。
全アルザスぶどう畑の30%をしめる。
② ヴォージュの東向き斜面は標高200~360m。
傾斜は25度からなっているため、陽当たりがよい。
粘土質で深く重い。
50%。アルザスの中心地だ。
③ 平野の土はこまかい砂状で軽い。
ブドウが熟すのが早い。
大陸性気候で、夏暑く冬寒い。
そのため地理的には「北であるが夏暑い」という
ブドウ栽培にプラスの条件を持っている
(コールマールで年間平均気温10.8度、
1月1.5度、7月20.1度、
冬はマイナス20度まで下がることがある。)
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気候は北海道とも共通点が多い。
地質は粘土という点では共通するところもあるか。
次はアルザスの品種。
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アルザスの8品種は上級品種と下級品種の2グループに分かれている。
・ シャスラ
通説エジプトはオアシスの出身。18世紀にアルザス到来。
実をつけるのがたいへん早く、ために生産量にムラ。
軽く口当たり良く中性的。むしろアルザス名物、
品種混ぜ合わせワインの一員として活躍。
・ シルヴァネール
18世紀にオーストリアより到来。
栽培面積アルザス1(23.4%)、生産性NO.1(97.5kg/ha)。
生産量のばらつきも少ない。ゆっくり熟す。
酸味がある。軽くさわやか。
果実の味がそのまま。泡少々。アルザス気軽ワイン代表。
・ ピノ・ブラン
北イタリア出身、ブルゴーニュ経由で16世紀にアルザスへ。
ロレーヌ、リュクセンブルグ原産品種オグゼロワと合わせて醸造。
ピノ単一より腰と丸み。香りに品、愛すべき酸味、という好結果。
泡のある、シャンパン風ワインの原料にも。
・ ミュスカ
オリエント系。1510年のヴァクスケイム司教台帳に記録。
2種ある。アルザスのミュスカは実が遅い。
ミュスカ・オトネルは早いたちで、雨、低温など開花期の事故率が高く、
3年に1度の成功率だが、香りは際だって涼やか。
長所を合わせた2種混合なので、軽く、高級4品種中もっともドライ。
摘み立てのブドウを食べているようなフレッシュなワイン。
特にアペリティフに好評。
・ ピノ・グリ(アルザスのトケとも呼ぶ)
ブルゴーニュより17世紀にアルザスへ。
早いたちなので開花期が気がかり。生産量にムラ。
ヴォリューム感あり。
強靱、ときにやわらかく、フルーティー。
豊潤、酸味もしっかりのワインとなるため熟成期待の長期保存型。
・ ピノ・ノワール
名声の赤ワイン品種。気候地形の類似によりブルゴーニュから。
ピノ家族中アルザス到着は1号。中世に重要な位置。
のち消滅、数村に残るのみ。
最近ぐんぐんの復活。ロゼの醸造法による酸味少なく、フルーティー。
ルビー色。唯一の赤だ。
・ リースリング
出はオルレアン。ぴかぴかのライン品種。
アルザス1のノーブルなブドウ。
世界中にごまんとあるリースリングとはむろん、
ドイツ産とも一線を画する。
実をつけるのが遅く、低温で熟すという特性。
生産量は高く一定。アルザス品種1すっぱい。
したがってドライ、しぶとい酸味、気品、
まぎれもない血統の良さ、デリケートな香りとフルーツの味。
特に酸味と果実の味の調和がアルザスワインの王者をつくる。
酸味に見合う糖分ができた年がリースリングにとってはよい年だ。
・ ゲヴェルツ・トラミネール
19世紀末、後輩によって誕生。
つまりは香り(アローム)の選択だ。
ゲヴェルツはドイツ語でスパイスの意。
トラミネール品種は1551年に植物学者が記録。
「特にそのアローム顕著でない」トラミネールから、
「アロームの新種」創作はアルザスの功績。早熟のたち。
開花期に危険がいっぱい。生産性もほどほど。
小粒・赤紫の実から白ワイン。
骨格、ヴォリューム、エレガント、
熟成後も香りの個性・花のアロームを持続。
むしろこれだけで飲む華やかなソリスト。
わかりやすいのでアルザス入門にもよい。
アルザス全生産の22%。
アルザス以外でいちばん有名なアルザス品種。
この品種がアルザスでいちばん力量を発揮するからだ。
実のなる早さから言うと、
ピノ・グリ→シャスラ→ゲヴェルツトラミネール
→ミュスカ・オトネル→ピノ・ノワール→ピノ・ブラン
→ミュスカ・アルザス→シルヴァネール→リースリング
の順だ。
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最後に地形とワインの味わいについて。
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・ 沖積土
沖積土とは河が山から運んできた石、砂、粘土と
北風が運んだ肥沃な土が混じり合う。
河と風が作った土だ。
軽く春温まりやすいので、リースリングの遅い性質にプラスする。
このときワインの香りは強い。
・ 石灰質
芯土がない場合は水を溜めることができない。
石灰質の土からは肉太のワインはできない。
・ 粘土
重い土で冷たくなりやすい。
空気の通りがよければ(石灰などが混じっていれば)
複雑さとエレガントさを兼ね備えたワインができる。
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自分がどんな地質の畑を手にするかで、
品種の選択やワインの造りも変わってくるということ。
非常に興味深い内容だった。
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