「新しいワインの科学」より、「ブドウとは何か?」という部分を。
「科学」というと、イメージするのは、
「○○原産で…」「~千年前から」「気候耐性は…」って感じを想像して、
中学生の頃を思い出して眠くなる、というものですが、
この本はアプローチの仕方そのものが違うんですよね。
まず、「野生の葡萄とは、どういう植物か」から始まります。
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ブドウは本来、森林地に生えるつる植物だ。
木に巻き付いてよじ登っていく。
つるが樹葉の天蓋を突き抜けて日光を浴びると、
花を咲かせ、実をつける。
ブドウの実は鳥に食べられ、
鳥の糞によって種子がまき散らされる。
ブドウはこのようにして育つので、
広い範囲に根を張らないと、
自分がまきついている木と競って
水や養分を手に入れることはできない。
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だからこそ、天候や土壌の条件が良い時ほど、
ブドウは実よりも、つるを伸ばし、葉を茂らせることに力を使う。
なるほど。やせた土地がブドウにとって良いのも納得できる。
また、剪定作業というのが重要になるのも、ここからですね。
さらに、話は進み、ブドウとして、という以前に、
「植物」としての課題を6分類していく。
植物はすべからく、以下の難課題を抱えている。
①十分な量の水を探し、その水分を失わないようにしながら、
同時にガス交換を行う。
②草食動物や病原体から身を守る。
③十分な光を探して、光合成する。
④種子をまき散らす。
⑤季節や環境の変化に適応する。
⑥ほかの植物との競合に負けないこと。
これらに加えて、葡萄には森林地のつる植物しての制約がある。
こういう制約を受けながら、進化し、適応してきたわけだ。
●ブドウの樹の仕組み。
①根
根には二つの役割がある。
「固定すること」と「取りこむこと」。
基本的に植物は多くのものを自分で造れるので、
取りこみ必要があるものは限られている。
ブドウの場合も、「水」と「無機イオン」くらい。
栄養分が無い場合は地中深くまで根を伸ばす。
3m以上に達することもあり、これが地上部の組織を支える。
②新梢と芽
地上部で重要な器官は新梢。
単純な組織で、とにかく速く伸びていくことを目的にしている。
この新梢に、一定の間隔を置いて芽ができる。
芽は複雑な器官で、花・葉・巻きひげのいずれかになりえる。
芽は休眠期に活動を止めつつ、2シーズンかけて成長を続ける。
③花
葡萄の開花には2シーズンかかり、
開花が誘発されるのは夏だが、実際に開花するのは、
翌シーズンの春になる。
花が形成されて受粉するのは、天候が暖かく、
安定している時期が望ましい。
*栽培葡萄は雌雄同花で自家受粉する。
④実
実の形成には3段階ある。
第1段階:実の構造ができ、酸が蓄積される。
第2段階:ヴェレゾン(色づき始め)になる。
第3段階:糖とフェノール類が蓄積、酸は減少する。
実は鳥のために作られるので、
種子の準備ができるまでは酸味が強く、
準備が整うと甘くなる。自然の摂理ですね。
植物としての葡萄。非常に勉強になります。
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