ブドウ根頭がんしゅ病(農研機構)

病原細菌:Rhizobium Vitis(Ti) (=Agrobacterium vitis , Allorhizobium vitis)

種類:600種以上の植物がかかるガンの1種

別名:クラウンゴール(crown gall)

症状:

  • 主に地際部、主幹、枝にがんしゅ(癌腫、腫瘍)を形成する。まれに根にもがんしゅができる(ブドウ以外の植物では主に根、地際部にがんしゅができる)。
  • がんしゅが形成した樹は形成不良、葉の黄化または赤化、早期落葉するようになり、1~3年くらいかけて前進が衰弱していく。最終的には枯死することが多い。特に若い樹(定植5年以内)くらいで被害が目立つ。

●発病要因

  • すでに苗木が本病原細菌に感染している場合があり、その苗木を定植すると1~3年で発病することが多い。
  • 土壌中にも病原細菌は存在し、健全な苗木を定植しても根から感染して発病する。
  • 発病した樹を処分した時に残った残渣(根など)に病原細菌が残り(2年以上)、同じ場所に定植した樹再び感染して発病する。

●現時点での対策

  • 防除効果の認められた登録薬剤はない(2022年2月現在)
  • 健全と思われる苗木を定植する
  • 症状が出ている樹の枝を使って苗木を育成するのは避ける
  • 発病した樹を処分した後の同じ場所に苗木を定植するのはできるだけ避ける。
  • 本病原細菌の接触伝染が原因とされる被害拡大はまだ報告はないが(実験的には接触伝染は可能)、樹液がハサミに付着するような時期には、ハサミで連続的に剪定するのは避ける。

●拮抗細菌の農薬登録に向けて

・農研機構にて新規微生物製剤を産官共同で開発中(特許第5854517)。

 ただし新規農薬登録には10年~20年以上の時間と、100億円~150億円以上の費用がかかる。

・ブドウ根頭がんしゅ病に対する新規拮抗細菌として非病原性RhizobiumのARK-1株を選抜した。圃場レベルでブドウ根頭がんしゅ病の防除に成功し、高価が安定的であることを実証した(2012年当時として世界初)

・ARK-1株の拮抗作用機構には以下の要因があげられる。

  • 植物体内における病原細菌の病原性発現の抑制
  • 根内部での長期間の定着
  • ???(他にも何かあるかも?)

→世界初のブドウ根頭がんしゅ病の防除剤の開発を目指す!

●癌腫を切除することによって治療できるか?の実証実験も実施

① 癌腫を除去した樹が翌年生育不良になるリスク

 →リスク比1.17(95%信頼区間0.52-2.66、統計的有意でない)となり、効果は判然としない

  • 癌腫を除去した樹に翌年新たな癌腫が形成するリスク

→リスク比0.89(95%信頼区間0.24-3.36、統計的有意でない)となり、効果は判然としない

●出典

2022年2月15日農研機構「ワイン用ブドウ栽培で問題となる根頭がんしゅ病の生態と防除研究の最前線」川口 章 氏の発表より

コメント

タイトルとURLをコピーしました