造り手の思想~中井観光農園~

2018年の8月のワインアカデミーの記事を再録。

●概要と歴史
経営面積は8ha、ワイン用のブドウが5ha。
大まかに言って5社にブドウを卸している。

観光農園とワイン用のブドウの並行は珍しい。
観光農園をやっていると、
作業は朝9時までと夕方5時からに限定される。
その中で質の高い管理作業を行う必要がある。

ワイン用のブドウを始めたのは33年前から。
当時は函館ワインとやっていた。

その頃はワインを売るのは大変なことだった。
はこだてワインで7軒の契約農家があり、
100トン目指して作って、300トン取れた(笑)

余市はリンゴ畑が中心だった。
リンゴが売れなくなって、
ワイン用ブドウに転換してきた。

●品種について
品種はケルナー、バッカス、ミュラートゥルガウ、ツヴァイゲルト、
ドルンフェルダー、ピノ・ノワールなどなど。
セイベル系は無くなりつつある。
余市では数軒を残すのみではないか。
ソーヴィニヨン・ブランへの転換が進んでいる。

気温上昇で品種も変化してきている。
品種の選択は10年スパンで考えていく必要がある。

たとえばピノ・ノワールも、
かつては10月末でまだ実は薄い赤色で、
「栽培は不可能だ」と結論されていた。
それが今では10月末には真っ黒に熟すようになっている。

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●品種詳細①~ツヴァイゲルトレーベ~
ツヴァイゲルトレーベは密植品種なので、除葉作業をスタートしている。
盆前には新梢をカットする。
今年は低温であまり伸びていない印象。
電動モーターのバリカンのような機械で、
2回ほどカットする。

ドイツから輸入した機械を使用。
1台300万円くらい。
国産の機械がないので、輸入頼み。
トラクターも油圧と馬力不足で外国製が多い。

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●品種詳細②~ケルナー~
ケルナーは樹齢が30年くらい。
つる割れ細菌病が出たりしている。
花が落ちて結実不良になる。
低温多湿で発症して、下から上に上ってくる。
今のところボルドーで抑えている状況。

枝もバラバラだし、誘引も大変。
ケルナーは管理が一番大変。
開花時に副梢でるので落とす。
花が咲く前にキレイに誘引しておく。

遅い時期でも糖度が上昇する。
副梢と葉量を多めに残す。
ドイツでは副梢残すと病気が出やすいといわれているが、
余市では特にそういうことはない。

●品種詳細③~バッカス~
樹齢は22年。
果皮が弱い。
晴れた日に房上の葉を1枚とったら、もう日焼けする。
秋雨で裂果もしやすい。
樹を作るのは楽。
除葉を気を付けないと、真っ黒になる。
少しずつ慣らすと日焼けはしない。
曇天が続く時を見計らって除葉する。
去年より若干遅め、9月末から10月上旬の収穫を予想している。

●改植について
20年くらいで改植した方が収量は安定する。
中井観光農園でも改植は進めているが、
苗木不足で年間2反~3反くらいずつという感じ。

樹齢が高くなると、それに応じて枝が太くなるので、
春に上げるのも大変になる。
樹勢が強すぎるときは断根を2~3年続ける。
樹齢が高くても花振るいはするので、
「花振るいを避けるために樹齢を高めにする」
ということは効果があると考えていない。

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改植した若木。
写真の青い支柱はダンポールと呼ばれる資材。
これが一番良いと考えている。
1本100円くらいだが何年も使えるし、
持ち運びもラク。

カバーも折りたためるもの、伸びるものいろいろある。

ブドウ畑の後のブドウは大丈夫。
リンゴ畑の後のブドウは樹勢が強い。
主幹を強くしすぎないこと。
強すぎると花振るいで大変。

●病害と防除について
防除は晴れ間を狙って行っている。
今年は例年より1~2回多く防除している。
今までにない雨で機械が入れないくらいだった。

つる割れ細菌病に関しては、
ドイツでは芽が出る前に予防散布している。
10日から2週間に1度、ずっと防除する。
だから発症は見られないとのこと。

今年はキャビン付きのSSのマスト付きを導入。
高速散布が可能になった。
全体が6時間くらいで終わる。
通常は倍くらいかかるので、大違い。

●肥培管理について

追肥は豚糞をベースに米ぬか。
反当り1トンを毎年入れている。

pHの管理は数年に1回程度。
ホタテの貝殻で調整している。
土壌分析を行うのは植え替えのときくらい。
場所によっての肥培管理がベスト。
肥培管理はなかなか難しいが、
pHで5~6で収まっていたら良い。

●収量調整
品種のポテンシャル以下に落としても効果はない。
(質は上がらない)
房を小さくするのが一番だろう。

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