ワイン用ブドウ品種について。

十勝総合振興局の依頼で、
2018年10月から発足した「ワインアカデミー十勝」にて、
2018年12月に講演をしてきました。

その内容を再掲。



ここでもその中身をアップしておきます。
当日は質問対応などで臨機応変に対応したので、
こちらでは筋を重視してまとめておきます。
質問などありましたら、コメントやメッセージください。
追記などで対応していきたいと思っています。


②欧州系品種と、それによって生まれるワインの紹介
さて、先ほども出てきた、
「ワイン造りはブドウが10割」という言葉。
もう少し深めてみます。

たとえば、ロワールの造り手、
ティエリー・ジェルマンは、

「ワインはその土地の個性を映す鏡のようなものです。
気候、複雑な土壌、その他さまざまな要素が絡み合い、
生まれるものです。
その個性を最大限に表現するためには、
その土地のことをよく知り、
手をかけてあげなくてはなりません。
ワインの質を決めるのは、
99%畑での仕事だと思っています。
そのために私は今日も畑で仕事をします。」




現在のメルシャンで取締役を務められた、
日本のワイン黎明期を支えたエノログである、
笠原信松さんの「ワイン造り余話」より引用。

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ワインの原料は言うまでもなく「ぶどう」で、
ぶどうがすべてであると言っても過言ではないのです。

従ってぶどう品種、
産地を背景にした産地特性の強い商品のため、
いいワインを造るには、
ワインに適した品種を適地に植え、
適正な栽培管理と好天に恵まれてできた
良質のぶどうでなければいいワインはできないのです。

ワインメーカーで小規模でも立派に生き残れるのは、
この部類です。
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このうち、一番最初の部分、
「ワインに適した品種を適地に植え」という部分。
ここから話をスタートさせたいと思います。

ブドウには多くの品種があり、
そのうちのどれを自分の園地に植えるのか。
これがブドウ栽培の最初の選択になります。

ワイン用のブドウ品種を考える場合、
まず、大きく2つの系統に分けることができます。

それが、【欧州系品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)】と、
【耐寒性品種(ラブラスカ、ヤマブドウなど)】です。

この2つの系統では基礎需要の量が違ってきます。

言うなれば欧州系はジャガイモ、ニンジン、タマネギなどの野菜で、

耐寒性品種はウド、フキノトウ、タケノコのような山菜といえる。

A.欧州系品種は洗練された味わい(誰もがおいしいと思うよう選別)

  耐寒性品種は個性的な味わい(好きな人は好きだが、苦手な人も)

B.欧州系品種は誰もが知っている(常に冷蔵庫にある)」 

  耐寒性品種は知っている人は知っている(常に冷蔵庫にあるわけではない)

C.欧州系品種の味わいのイメージはワイン好きなら誰もが知っている。

  耐寒性品種の味わいはあまり知られていない(時としてマイナスのイメージ)

つまり、欧州系品種によるワインは、ワイン好き全体が顧客となりえる。

ただし、寒冷地においては耐寒性品種の魅力は捨てがたい。

(リスクのヘッジのため。安定生産と収量は魅力。)
これらのどちらを採用していくのか。
あるいは併用するのか。
それによって、そのあとの
「目指すべきワイン」というのも大きく変わってきます。

③欧州系品種紹介
冷涼地で栽培されている有力品種とそれによるワインを紹介します。
ワイン用のブドウ栽培の品種選定の尺度として、
良く利用されるのが、アメリカのアメリン博士とウインクラー博士による、
有効積算温度を使った気候区分と適合品種の組み合わせです。
最も冷涼な「リージョン(Region)Ⅰ」から、
もっとも温暖な「リージョンⅤ」までに区分されます。

この有効積算温度は鹿取みゆき氏「The New Hokkaido Wine」
という本のデータをもとにしてみてみると。
山梨県勝沼町で積算温度は2123(F日)でリージョンⅣ。
北海道では富良野1081、岩見沢1120、池田813、余市1111で、
十勝も含めてすべて最も冷涼なリージョンⅠに属します。

世界でリージョンⅠに属するエリアは、
フランス…シャンパーニュ地方、ブルゴーニュ地方のシャブリ
ニュージーランド…マールボロー
オーストラリア…タスマニア
イタリア…フリウリ

リージョンⅠの適合品種に関しては、
ピノ・ノワール、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、
ピノ・グリ、シャルドネとなる。


ただし、この気候区分も完ぺきではなく、
事実、北海道は気候的にはリースリングは最適品種になっているが、
北海道においてリースリングの栽培はごく限定的だ。

先日、10Rワイナリーのブルースさんに、
上記の件を質問したとこと、
「夏の長さではないか」ということだった。
つまり、山型の気温推移でも、なだらかな推移でも、
積算温度は(平均するので)同じになるが、
夏が暑く、短い北海道の夏はリースリングに向かないのではないか、
ということだった。

このように、教科書的には適合している品種が、
何かの要因によってうまくいかないことはよくある。
(逆もまた起こり得る)

つまり、新興産地では「やってみないとわからない」という要素は、
どうしても発生してしまうということになる。

そのうえで、オススメの品種をいくつかピックアップしてみる。


A.フランス主力品種
まずは、



ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン




B.ドイツ・オーストリア系主力品種:ツヴァイゲルト、リースリング、ケルナー



C.最近注目の品種:ピノ・グリ、ピノ・ブラン、ゲヴェルツトラミネール



最後に北海道で栽培されている品種を、わかる限り一覧にしました。
(50音順)

【ヨーロッパ系/ヴィニフェラ】
・オーセロワ
・ガメイ
・ゲヴェルツトラミネール
・ケルナー
・シャルドネ
・シルヴァーナー
・ソーヴィニヨン・ブラン
・ツヴァイゲルト
・ドルンフェルダー
・トロリンガー
・バッカス
・ピノ・グリ
・ピノ・ノワール
・ピノ・ブラン
・マスカット・オットネル(ミュスカ)
・ミュラートゥルガウ
・メルロー
・リースリング
・レンベルガー

【生食系/ラブラスカ】
・キャンベルアーリー
・旅路
・デラウェア
・ナイアガラ
・ニューヨーク・マスカット

【ヤマブドウ系、交雑品種】
・アムレンシス
・清舞
・清見
・ザラジェンジェ
・セイベル5279
・セイベル9110
・セイベル13053
・ふらの2号
・山幸

 特にピノ・ノワールをはじめとして、最近はクローンにまでこだわる生産者も。

④苗木について(10分

 ・なぜ接ぎ木(台木)が必要なのか。

 →「フィロキセラ耐性」と「土壌適応性の拡大」。

 →台木の種類紹介。

 A.主要3大品種(リパリア、ベルランディエリ、ルペストリス)

 B.北海道の採用品種(5C、5BB、101-14)

 C.台木品種もクローン指定する時代が来る。

 →ボルドーの例。

 ・栗沢醸造用ぶどう育苗研究会とは?

 →藤吉さんの接ぎ木技術は活着率60%。

 →接ぎ木技術紹介。

⑤耐寒性品種の可能性(5分)

 ・挿し木繁殖も容易。

 →欧州系とのブレンド(アッサンブラージュ)によって、

  味わいに北海道らしい個性を与えられる可能性もある。

 →混植、混醸という可能性。栗澤ワインズ紹介。

 ・ヤマブドウ系、ラブラスカ系品種紹介。

 A.ふらの2号、山幸、清見

 B.デラウェア、キャンベル、マスカット・オットネル

⑥アイスワインへの取り組み(5分)

 ・江丹別での事例。

 →チーズとワインとパンとレストランで地域おこし。

 →「土地の食べ物に合うワイン」という発想。

 →クラウド・ファンディングを利用。

 →初期のスタートは兼業でも。

 *東京でやる気満々の学生を見つけた(?)

 →今後が楽しみな事業。全面協力していきたい。


まず、ヨーロッパ系の高貴品種はどうか。
カベルネ・ソーヴィニョンはボルドーを中心に評価が高いが、
北海道では冬が早く、完熟が難しいのが障壁になっている。

ただ、最近の地球温暖化の恩恵もあって、
全体的にブドウの糖度が上がる傾向にある。
結果、ピノ・ノワールやリースリングなど
高貴品種の栽培・醸造に取り組むワイナリーも増えてきた。

リースリングには期待が高まるが、
根付くまでに時間がかかるのが難点。
鶴沼ではヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)や
トロリンガーが試験的に生産されている。

試験的な栽培では、ヤマザキワイナリーのピノ・グリ、
北海道ワインのグルナッシュ、シラー、
ナカザワ・ヴィンヤードのシュナン・ブランやカベルネ・フラン、
ピノ・ムニエなどが始まっており、期待が高まる。
またドイツのゲヴュルツトラミネールなどのレア品種も始まり、
これまでの道産ワインと全く違う方向性のワインにも期待が高まる。

そして日本独特の品種として、「山ブドウ」という野生品種があり、
それとカベルネ・ソーヴィニョンの交配によって生まれた、
「山ソーヴィニョン」などが注目され始めている。

北海道のワインも、品種の多様化が進み、
アッセンブラージュも含めた可能性の飛躍的な広がりが始まる。
今後の展開から目が離せない。

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投稿者: chatnoir2010

北海道初のワイン用ブドウの苗木屋を目指して奮闘中。2019年は新規就農研修、最後の年。いよいよスタート間近。がんばります!

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