イタリア視察に行ったときの報告の2投稿目。
順を追って日記形式で行くので、イタリア2日目です。
シチリア島エトナの宿に1泊した後からです。
前日夜においしいワインで酔っぱらいましたが、
良いワインは残らないのか、6時半頃に起床。
身支度整えて、1泊だけのため荷物も準備。
時間に余裕があるので、宿周りを散策する。
さすが、少し歩くだけでブドウが現れる。
仕立ても日本ではまず見ないゴブレ(株仕立て)。
オリーヴの大木なんかもあったりして、
朝の散歩をするだけでテンションが上がる。
テンション上がって、あまりやらない貴重な自撮りも1枚。
日本で振り返って、興奮していたな…と気づく笑
さて、ワイナリー「フランク・コーネリッセン」を経営されている、
フランク夫妻と朝8時半に集合で畑を見せて頂く。
nebrodi(ネブロディー)山脈が見える景色も素晴らしい。
D.O.Cとしての「エトナ」はシチリア島最古で、
1968年から生産地として公的に認められている。
エトナの畑は歴史的にcontrade(コントラーダ)とよばれる
小さい区画に分けられている。
この区分けは行政区分とは別のもので、
その区画ごとにワインにもそれぞれ特徴がある。
案内して頂くワイナリー「フランク・コーネリッセン」の畑は、
飛び地で区画がいくつもあり、コトラーダ名で呼ばれている。
当主のフランク自身はベルギー出身で、
ワインの輸入業者として成功し、
2001年からシチリア島エトナで栽培開始したという経歴。
ちょうどスタートしたタイミングで、
周りにも新たな生産者が入ってきた。
その結果、産地形成が進んでいったという歴史があるとのこと。
ブドウ品種はネレッロ・マスカレーゼという土着品種で、
仕立てはここもゴブレ中心。
ネレッロ・マスカレーゼのポテンシャルは昨夜感動した。
「ピノとネッビオーロの特徴をもつ」と評されるが、
本当にエレガントで、育ててみたくなる。
scimonetta(シモネッタ)の畑へ。
ここは新しい苗木を植栽した区画。
掘って根切りして、より地中深くに根が向かうように工夫されている。
あと夏の生育期間の降雨が少ないので水をためる役割も。
コータミッレと呼ばれる標高1000mの基準を表す国道通っていく。
畑に入らせて頂くと、
なんとヤマアラシ(Istrice-Porcupine)が死んでいる。
ところ変われば動物も変わるな。
食害はしないが、背中のトゲで刺しに来るので危険な動物のひとつ。
日本ではまず見ないので結構驚く。
ギリシャが紀元前2000 年頃に植民地にしたときは、
東側から入植してブドウ畑を増やしていったらしい。
北側はアクセス大変でなかなか入らなかったという経緯がある。
1800年代に醸造所がたくさんできた。
その最も高いところでも標高900mくらい。
かつてはムーロ(ロバと馬の交配動物)と共に登ってきたとのこと。
車で登っていてもかなりの斜度。
そうとう苦労して畑を切り開いたのだろうと想像する。
畑には共生のために、
アーモンド、チェリー、クルミなどが植られている。
アーモンドはちょうど開花の時期。
桜みたいでなかなか綺麗。
(ゴッホの名画「花咲くアーモンドの小枝」を思い出す。)
このエトナ火山は活火山で、1981年の噴火は大規模だったそう。
YouTubeにも動画あるとのことで見てみたが、
速度は遅いが溶岩流が広域に流れ出し、
ブドウ畑を消滅させたとのこと。
ブドウの生産量、質も良かったエリアだが、
自然の力の前にはなすすべがない。
今また溶岩にコケが生えだし、
ワイナリーが入って植え始めている。
自然も人間も強いな。
朝食は地元のパン屋さんにて。
イタリア人は朝は余り食べない。
せいぜいがクロワッサンとか、甘い小さいパンを少し。
地元の皆さんという感じで、「チャオ!」の声と抱擁が行われる。
僕は(もちろん)初対面なので、
「ピアチェーレ(はじめまして)」の挨拶と握手。
日本のノリでパンを2つ選んでエスプレッソを飲むと、
「よく食べるな~」と感心される。
アメリカンコーヒーが「ゆっくりと飲む」だとするなら、
エスプレッソというのは「サッときめる」という感じ。
一瞬でカフェインが効いてくる感じだ笑
そうやってしっかり脳を覚醒させて、
フランク氏の哲学を拝聴する(奥様が日本語に訳してくれる)。
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●「テリトリアリタ(teritoriarita)=土地らしさ」について
自分のブドウ造り、ワイン造りは土地らしさを大切にしている。
畑には基本的に何も入れない。肥料なども。
中には客土のように他所から良い土を入れる生産者もいるが、
あんなのは正気の沙汰ではない。
エトナは火山の噴火が起こるので、
「溶岩でゼロになり、苔が生えて有機物が生成される」
という繰り返しが行われるのが特徴。
通常は長い時間をかけて細かい土になっていくが、
エトナでは相対的に短い時間でそれがリセットされる。
それこそが良いのだと考えている。
「テロワール」というフランス語は、
気候風土だけでなく、人や文化も含んでいる。
そういう意味合いではなく、本当の土地らしさ、気候を大切にしている。
イタリア語の「テリトリアリタ(teritoriarita)」がまさにそういう意味。
客土なんかをすると、らしさがなくなってしまう。
エトナは溶岩でできた新しい土地だからできることだ。
日本、そして北海道のような古い土地では、
なかなかそうは行かないだろう。
その土地ではその土地の工夫をしていかないといけない。
●ゴブレ仕立てが採用される理由について
「やはり樹勢を抑えるためですか?」と質問すると、
少し笑って、「そういうロマンティックな回答もするけど」とのこと。
そんなことよりも、歴史的にワイン造りは農業である。
農業をやっていればわかると思うが、
そのためにはまず第一に生産性が求められる。
低いコストで高い収益を出さないと手元に残らない。
かつてのエトナは貴族が農奴などを利用してワイン造りを行った。
未開墾地も多く、「労働力」と「土地(開墾」)のコストなら、
当時は労働力の方が圧倒的に安かっただろう。
だから、面積あたり最多本数を植えられるゴブレが採用された。
伝統的には5角形に植えられる。
これならば人が作業した後、移動せずにその場で回転して次の株へ。
その場で5つの株での作業が行える。
作業しやすく、面積あたりの数が最大という仕立て。
自分はこの伝統的なエトナの風景を守るためにゴブレ中心。
もちろん機械を入れるために垣根仕立てに転換する生産者もいる。
そこは考え方次第だ。
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有意義な朝食の時間。
幸せな気持ちになる。
車で移動。
Barbabecchi(バルバベッキ)の畑も見せていただく。
1900年代の第一次世界大戦前に植えられた、
最も標高が高いエリア。
栗の木が支柱に使われることが多い。
モトザッパと呼ばれるトラクターで入る。
こんな傾斜と石垣(段差)でトラクターは、
自分なら怖くてできないな…。
ベルメッティと呼ばれる小さな虫がオリーブに出ているとか、
細かい変化をよく見ながら圃場を回られているという印象を受けた。
シチリアは3月でもうすっかり暖かい。
抜けるような青い空とブドウ畑が美しかった。
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