造り手の思想~ふらのワイン~

2018年のワインアカデミーより。
これまた旧ブログより引っ越し記事。


ふらのワインの高橋克幸 製造課長による、
ふらのワインにおける栽培の話と醸造の話を。

これまた内容が濃いので、
「栽培編」と「醸造編」の二部構成にしようと思います。

まずは栽培編から。

●概要
「ふらのワイン」は運営が「富良野市ぶどう果樹研究所」。
これは市役所が運営していて、
公務員がワインを作っているという特殊な組織。

ワインの造りは、
いわゆる自然派の造りではない、
一般的な手法を用いている。

自身は岩見沢出身で北海道大学を出、
酵素の研究をしていた。
本州で勤めて、北海道に帰ってきた。
チリ、アルゼンチン、カナダでワインの研修を受けた。
カナダではアイスワインの製造を学び、導入した。
日本ではそれまで自然凍結によるものは皆無だった。
(人工的に凍らせたものはあるが、アイスワインではない)

●富良野の気候
富良野と十勝、岩見沢を比較する。

降水量では、富良野は例年、夏の降水が一番少ない。
ただし今年は7月の雨が1番多かった。
開花時の雨で花振るいが発生、収量は激減した。

平均気温では夏の気温が岩見沢と同じくらい。
ただし秋口から一気に下がり、
盆地という地形から、9月10月以降、池田よりも寒くなる。

有効積算温度は1977年に1050度くらいだったのが、
2017年には1150度まで上がっている。
1000度前後ではドイツ系の品種か、
ハイブリッド品種しか育たない。
しかし今や、1150度くらい。
これならヨーロッパ系の品種も十分に育つ。

しかし冬がマイナス30度まで下がる。
こんな産地は世界でも他にない。
しかし、積雪の多さがブドウを守ってくれる。

寝かせた樹の1番上のところから、外気までの距離が大事。
樹より上に40cmの積雪があれば、
ブドウ周辺は外気温に関わらず、
マイナス2度~マイナス4度までしか下がらない。
一方で、10cmしか積雪がない場合は、
マイナス6度~マイナス19度まで下がる。

つまり、樹上に20cmは雪がないと、
当該の危険性が出てくるということになる。

●採用品種
そのような気候要因から、ふらのワインでは耐寒性品種が中心。
セイベル13053、セイベル5279、ふらの2号などがそれ。

近年、セイベル系品種の栽培は減少してきている。
特にセイベル5279は激減している。
飲みやすいワインならできるが、
非常に良いワインにはならないというのが要因。

ほかの生産者からは「まだセイベル作ってるの?」といわれる。
確かに濃いワインは作れないかもしれないが、
ブレンドによって向上の可能性は多く秘めていると考えている。
セイベル6割、ケルナー4割の「バレルふらの」という商品、
かなり人気のあるキュヴェ。

寒冷地でのワイン造りを目指すのであれば、
寒さに強い品種と高品質の品種を育て、
ブレンドでそれぞれの魅力を引き出すのが良い。

「ふらの2号」はヤマブドウとの交配品種。
ヤマブドウの系統は雪がなくても枯死しない品種群。

他にもメルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、
リースリングなどにも挑戦している。
現段階ですごく良いわけではない。
ブレンドで使うというところ。
ツヴァイやケルナーは特色が出てて良いと感じている。

●病害虫について
関連記事に集約。

●芽かき
 樹勢コントロールのために行う。
 どの枝を残すか判断する。
 細い枝、太い枝のばらつきをなくすこと。
 細い枝は登熟が悪いので、次の年に飛んでしまう。
 太い枝をもったいないからと残さないこと。
 仮にその枝に素晴らしい2房ができたとしても、
 バランスの崩れで残りの6房をダメにしてしまう。

●開花期
 ブドウの花には花弁がない。
 おしべが先に成熟し、めしべが後から成熟する。
 おしべのみ成熟したときに雨が降り、
 花粉が流されてしまうと花振るいが起こる。

 ヤマブドウ系には雄株と雌株があるので、
 どちらかだけでは結実しないので注意。

●剪定
 一般的なタイミングは葉が落ちてから1週間~10日頃。
 (霜が2回くらいおりると落葉する)
 枝の切り口を見て、緑色だと登熟はまだ。
 茶色くなってきたころ合いで剪定する。

 剪定のタイミングは難しい。
 登熟せずに切っても、積雪があれば大丈夫。
 ブドウは寒さを感じるとデンプンを糖に変える。
 これが不凍液の役割を果たし、膨張による破裂を防ぐ。

●良いブドウとは
 品種の特徴が表現されていること
 根の深い健全な樹
 病気に侵されていないこと
 様々な成分を多く含むこと。
 →そのためにも、ブドウにとって良い環境を選ぶ、
  もしくは作ることが大切。
  天候は変えられないが、土壌は改良がきく。

●挿し木について
 かつては近隣の農家にも配分するため、
 セイベルやふらの2号は挿し木で増やしていた。
 バーミュキュライトと赤玉で床土。
 12cmポットで育苗して、外に出す。
 その後、大きめのポットに移し、定植していた。

 現在ではビート用のペーパーポットを使用。
 ハウスの中に地植えしている。。
 なんといってもこの方が持ち運びが楽。
 10本20本を束にして、ビニール袋で保管。
 春に定植する。

●接ぎ木について
 成功率は50~70%というところ。
 穂木、台木の充実度が大事。
 温度管理も重要。
 特に3月4月の暖房は必要。
 良い試験区では成功率80%を超えたところも。
 今後に期待できる。

 人気ブログランキングに参加しています。
北海道のワインを全国に広めるため、クリックをお願いします!

コメント

タイトルとURLをコピーしました