はじめに
「ワイン用ブドウの苗木屋になる」という目標を掲げ、
新規就農研修の最終年の今年、
見よう見まねで自らも仲間とともに接ぎ木作業を行いました。
その後の生育状況も含めて、ここで一度まとめてみようと思います。
作業別に、来年以降の改善点なども書いていきます。
挿し木
2019作業日程
4/7 台木品種の穂木取り
4/14 挿し木(ハウス内/ロックウール)
4/24 挿し木(露地/黒マルチ)
6/10 ハウス内の苗を圃場に仮植
7/14 ポット苗の残りを圃場に定植
8/5 支柱立て、誘引
9/3 160cmで摘芯
11/22 掘り取り
11/26 台木剪定・枝集め
挿し木詳細
穂木取り
台木の穂木を頂けることになったので、園地に伺う。
接ぎ木の1週間前にもらい受ける。
去年秋の剪定枝が雪の下に放置されているものを回収。
ハイエースで運搬し、扱いやすい長さ(1.5mくらい)でカット。
土で汚れていたので、殺菌も兼ねてベンレートに浸漬・洗浄。
次からは秋の剪定を行い、1.5mくらいでカットし、
濡れ新聞紙で切り口の乾燥を防ぎ、ビニールで包んで保管する。
凍結せず、温度が上がらない場所で、なるべく乾燥しないところへ。
挿し木作業(ハウス)
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/04/img_7314-2.jpg?resize=1024%2C768&ssl=1)
5cm四方のロックウール・キューブを利用して挿し木。
管理は育苗箱にビニールを敷き、
ロックウールが渇かないように潅水した。
全てを1芽挿しにした。
下の切り口(根側)は斜めカットし、
発根促進として「ルートン」「木工用ボンド」「何もなし」で、
どれだけの差が出るかを実験した。
上の切り口(芽側)は水平カットし、
基本的には接ぎ木用のロウで固めた。
結果として、「ボンド>ルートン>何もなし」となった。
当然ながら発根促進剤を使った方が成功率が上がりそう。
ただ、露地の挿し木では「ルートン>ボンド>何もなし」
という結果になったし、ほかの人の情報でも、
「ボンドは無意味」という結果もあるようで、
なかなか結論を出すにはいたらない。
上の切り口のロウは手間と費用がかかる割に、
あまり意味はなかった。
乾燥防止、殺菌なら「トップジン・ペースト」あたりで十分。
台木系の品種なら、それすら特にいらない感じ。
ロックウールという資材に関しては、
潅水管理などは楽だが、圃場にそのまま残留してしまうのが、
根が絡まり外しにくいし、外しても廃棄が手間。
より良い資材があれば替えていくべき。
挿し木作業(露地)
ひと通りの接ぎ木作業が終わった後、
残っている台木品種の枝がもったいないので、
挿し木にて繁殖を試みる。
ロータリーでおこした露地に黒マルチを敷いて、直接挿す。
下部の切り口には「ルートン、木工用ボンド、何もなし」と
ハウス内の挿し木と同様の条件で実験。
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/04/img_7375-1.jpg?resize=1024%2C768&ssl=1)
今回は手でマルチを敷き、
長さの基準とする棒(いわゆる「バカ棒」)と、
メジャーで測量をしつつ手で挿していく。
挿した後は、
開けた穴に土を乗せるパターンと乗せないパターンで実験。
合計で1100本を挿し木。
今年は雨の少ない乾燥した気候だったこともあってか、
水分量の多い傾斜の下の方、
それも穴を土で塞いだ区画が好調だった。
株間は15cmとしたが、
発芽率が良い区画では混みあって大変だった。
幅の狭いマルチにして2条の千鳥などでやればよかった。
管理作業
電熱線の入ったガラス温室にて管理。
農ポリでトンネルをかけ、その上に寒冷紗。
中に加湿器を入れ、温度・湿度計で管理。
この温度計は最高最低を1日記録してくれるので、
どこまで温度が上がったかor下がったかがわかる。
ただ、この施設はボイラーは炊いていないので、
4月中は4~5度まで温度が下がることもあり、
湿度も加湿器の調子によって変動が大きかった。
このあたりの管理がもっとしっかりできれば、
生育も早くそろったと考えられる。
ただ、接ぎ木と違って挿し木の場合、
特にヤマブドウ系と台木品種テレキ5Cにおいては、
やや低温(24度前後)くらいの方が生育がよかった。
逆にヨーロッパ系品種の適温(30度手前)で安定させた
北海道大学の研究室などでは、
ヤマブドウ系はほぼ全滅という結果となった。
適温も品種によって違うのかも。
また、5月にはカビの発生も見られた。
湿度を90%越えを目指して、
常時70%以上はある状態なので、
やはり発生しやすい条件のようだ。
発生し始めたらベンレートで殺菌。
仮植・定植
発根を確認したものから鉢上げを。
今回は観察も兼ねて、
全てロックウールを砕いて確認し、
発根があるものから鉢上げを行った。
鉢上げ用のポットは12cmが最も使いやすいが、
かなり場所をとるのが難点。
仮植は株間15cm、定植は株間1.5mで植えた。
基本的にロータリー耕のみで元肥はナシ。
うちの庭のみ、ph調整も兼ねて草木灰を施用。
黒マルチで被覆しました。
支柱立て・誘引・摘芯
伸ばすよりも栄養素の蓄積を重視して、
160cmの高さで摘芯を実施。
特に副梢もかかず、自由に任せました。
大体、9月に入って160cm到達。
結果集計
ヤマブドウ系
ヒマラヤ挿し木330→発根258→定植220(66.7%)
小公子 挿し木110→発根 15→仮植 7( 6.4%)
台木品種
5Cハウス 挿し木172→発根133→仮植133(77.3%)
5C露地 挿し木1100本→掘り取り
(ルートン、ボンド、何もなし)
ヨーロッパ系品種
ゲヴェルツ 挿し木55→仮植15→掘り取り12(21.8%)
ピノ・ブラン 挿し木55→仮植45→掘り取り38(69.1%)
小公子は細く乾燥していたため、
挿し木時の予想通りほぼ全滅となった。
挿し木は純粋に枝の充実度と乾燥度合いに規定される印象。
接ぎ木
2019作業日程
4月 7日事前準備
4月14日前日準備
4月15日接ぎ木(リースリング、シャルドネ)
4月22日接ぎ木(ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール)
6/10 ハウス内の苗を圃場に仮植
7/14 ポット苗の残りを圃場に定植
8/5 支柱立て、誘引
9/3 160cmで摘芯
11/22 掘り取り
11/26 台木剪定・枝集め
接ぎ木詳細
穂木取り
園地より穂木を頂いてきて、
殺菌剤のベンレートと活力剤のオキシベロンに浸漬。
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/08/img_7259-1024x768.jpg?fit=640%2C480&ssl=1)
穂木がたくさんある場合は良質な枝を選ぶ。
芯の円形の部分が小さく、
周りの緑の部分が大きいほど充実した枝とのこと。
台木、穂木の調製・接ぎ木作業
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/04/img_7306.jpg?resize=1024%2C768&ssl=1)
台木は20cm、2芽を基準に調製。
根側の切り口は斜めにカット。
切り口は芽の直下となるようにする。
(芽の部分が発根しやすいため)
穂木は5cm、1芽になるように調製。
それらをオメガカッターで接いでいく。
右手で穂木を持ち、上に合わせる。
左手で台木を持ち、下に合わせる。
台木と穂木の太さを合わせるのが大事。
オメガカッターは足踏みで接ぐが、
押して切って、引いて接ぐ。
意外と引く力を強めにするのがコツ。
押すのはそれほど力はいらない。
女性でも十分に次ぐことができる。
接いだものは溶かして80度くらいをキープした
レブワックス(ロウ、殺菌剤入り)を付け、
バケツの水で冷やして固定する。
今回は念のため、メデールテープで巻いて固定。
メデールテープは無くても良い感じだったが、
品種などを書くために便利なのであってもよい。
完成したら即座にロックウールに挿し、水に浸す。
管理作業
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/04/img_7346.jpg?resize=1024%2C768&ssl=1)
管理作業は挿し木とほぼ同様。
あとはオガクズを利用したものも実験。
下は培養土、接ぎ部がオガクズになるようにした。
資材は牛乳パックを使ったり、
グローチューブを切ったものを使用したり。
オガクズは水分が適度に保たれるので、
加湿空間を作らなくてよいというのが利点。
オガクズには殺菌効果があるようで、
カビが付きにくいように感じた。
その代わりに資材費がかかるところが難。
![](https://i0.wp.com/hokkaidowinelover.com/wp-content/uploads/2019/05/img_7474.jpg?resize=1024%2C767&ssl=1)
結果集計
リースリングRi、シャルドネCh、
ソーヴィニヨン・ブランSB、ピノ・ノワールPN。
Ri 接ぎ木→仮植71→掘り取り25
Ch 接ぎ木→仮植47→掘り取り10
SB 接ぎ木→仮植20→掘り取り 9
PN 接ぎ木→仮植30→掘り取り10
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