農文協の本は専門的で勉強になるんですよね。
内容を要約しておきたいと思います(備忘録として)。
以下、左1マス空けは引用部分。
①接ぎ木とは
ワイン用のブドウはヨーロッパ系の品種がメインですが、
これらの品種はアメリカからやってきた「フィロキセラ」という虫に、
まったく耐性がないので、絶滅の恐れがある。
だから、耐性を持つアメリカ系の台木(根の部分)に、
味わいの優れるヨーロッパ系の穂木(枝葉の部分)を接ぐわけです。
でも、なぜ2つの木がくっつくのか?
ブドウもそうですが、樹木というのは、
形成層と呼ばれる細胞分裂が行われる部分が、
年々、外側へ外側へと塗り重ねるように肥大していきます。
(これが年輪になるわけですね)
この形成層は、傷がついた場合、それを治すために、
癒傷組織(カルス)が作られる。
このカルスが作られる前に2つの樹木をつなげておくと、
カルスから連絡形成層が作られ、維管束が連結します。
これで、もともと違う個体だった2つの植物が、
1つの植物になってしまうわけです。
植物ってすごいな~。
この接ぎ木のために、良い条件の台木を育てる必要があるわけです。
②活着力・発根力の強い枝を育てる。
接ぎ木や挿し木に最適の穂木は、
前年春に伸長開始し、今冬に休眠に入った一年生の休眠枝である。
落葉果樹の場合、晩秋に活動が止まり、
夜間の気温がマイナスになり始めると自然落葉して休眠状態になる。
このように早めに活動が止まり休眠に入ったものは、
皮部が硬化して、樹種固有の色に変わっており、
デンプンや糖分などの貯蔵用分を多く蓄えていて充実な枝である。
接ぎ木・挿し木後のカルス形成力が強い。
晩秋になっても活動が止まらず、
おそくまで落葉せず、緑色のままの枝は窒素が多く
デンプンや養分の蓄積が少なく、軟弱なため、
凍害などにも弱いし、
接ぎ木の活着、挿し木の発根後の生長が劣るので適さない。
③充実した枝・芽ができる位置
1本の樹の中では、充実した枝は日当たりのよい位置に発生し、
節間が徒長せずに詰まり気味で、
ずんぐりした形をしており、芽が大きく育っている。
一方、日陰の枝葉芽が小さく、
太い基部に比較して先端部の太りが悪いことが特徴である。
また、細い枝には貯蔵用分も少なく、接ぎ木や挿し木の生長が劣る。
また、接ぎ穂や挿し穂には、花芽の着いていない、
葉芽の充実した1年生枝が適している。
花芽を着けて節間の短くつまった枝は、伸びる力が弱いからである。
先端付近に花芽がある枝や、基部の葉芽が小さく弱い枝を使う場合は、
先端部や基部を切り除いて、充実した葉芽の多い中間部位を用いる。
④よい穂木を採る母樹の管理
幼弱相の部位から発生した枝は発根力が優れるが、
枝は徒長しやすくなる。
中間相を示す部位から発生した枝は、
芽の充実がよく、成長力と発根力を兼ね備える傾向がある。
多量の接ぎ穂や挿し穂に使う場合には、
穂木採取用の母樹を育てて、
毎年切り詰めて新梢を発生させて用いる。
この場合、樹が幼若相の状態になり徒長しやすいので、
充実した芽の着いた穂木を得るためには、
枝に十分光が当たるような管理、
チッソ肥料を過剰に与えないことなどが重要になる。
⑤休眠枝の穂木は、発芽と乾燥を防ぐ
落葉果樹の休眠枝では、発芽する際に枝の中の貯蔵用分が使われる。
そのため、発芽を始めた休眠枝を穂木に用いると、
貯蔵養分が発芽過程で消耗してしまい、
カルス形成に必要な養分が不足して接ぎ木部の活着が劣ると考えられる。
穂木は発芽前に接ぐことが重要になる。
また、樹木の茎や枝は、切り口など傷ついた部位が乾燥すると、
カルスを形成しなくなる。
したがって、穂木用の休眠枝の貯蔵では、
発芽を抑制することと乾燥させないことが重要になる。
接ぎ木直前に切った穂木を接ぐ場合でも、
穂木を湿った布などで包んで乾燥を防ぎながら接ぎ木作業をすると、
カルス形成がよくなる。
⑥接ぎ木活着後のケア
接ぎ木後、穂木と台木から新梢(台芽)が発生して伸長する。
穂木の新梢を良く伸ばすために、台芽は小さいうちにかき取る。
台芽が伸びすぎてから一気に切り取ると、生育不良や枯死を招きやすい。
生育中にこの作業を数回繰り返して行う。
穂木の新梢は葉を増やしながら光合成を行って、
糖分や発根促進物質を台木に供給する。
穂木から数本の新梢が発生した場合は、
1本を残し切り取る。
新梢が3~5cmに伸びた時期が、穂木の新梢整理の適期である。
さて、このような接ぎ木において、
重要なのは台木品種の繁殖ということになる。
なぜなら、穂木は販売先(ヴィンヤード、ワイナリー)のものを使えるが、
台木は販売数分必要だからだ。
では、台木品種はどのようにして増やすのか。
①挿し木とは
前述のカルス形成によって、枝を土に挿しておけば、発根する。
挿し木の方法には、挿し床の場所や装置によって、
露地挿し、温床挿し、ミスト挿し、密閉挿し、密閉挿しなどがある。
また、挿し穂に用いる植物体部位によって、
枝挿し、葉挿し、葉芽挿し、根挿しなどに分けられる。
枝挿しは、休眠枝挿し、半熟枝挿し、緑枝挿しなどに分けられる。
「休眠枝挿し」
挿し穂には発根力の優れる1年生枝を用い、
挿し穂の採種時期は休眠期(発芽前)が適する。
多くの樹種で発芽前の休眠枝を10~20cmに切って、
上部の1~2芽が地上部に出る深さに挿し木する。
②芽・葉と根の協力関係が大切
挿し穂の発根には、
芽(成長点や幼葉)で合成されるオーキシン(IAA)や
葉で合成された発根促進物質が必要で、
発根しやすい樹種では、それらの物質の供給が多いと言われる。
休眠枝を挿し木した場合、
挿し穂から伸びる葉を除去したり、葉を摘み取ったりすると、
発根が抑制される。
その理由として、芽を除去した挿し穂の発根部位では、
オーキシン濃度が低下していることが知られている。
オーキシン作用のある発根促進剤の処理で効果が得られるのは、
このような仕組みによる。
③発根のサインは「再発芽」
樹種、地温、気温などで異なるが、
落葉果樹の休眠枝砂嘴では、挿し木後50日~60日から、
挿し穂の基部に形成されたカルス内で根源基が発達して発根が始まる。
そして、発根開始と共に、新根が吸収した養分によって、
身長停止していた新梢の先端が再び伸び始める。
したがって、新梢の再発芽が発根のサインである。
以上から、挿し床の水管理は、発芽して新梢が伸びている間は
土が乾かないよう十分に灌水し、新梢が身長停止し、
発根の始まる時期は灌水を控えめにして、酸素供給をする。
根の出る時期に水が多すぎると発根が劣り、根腐れも生じやすいからである。
④挿し木の時期
挿し木の発根に適した床温は、多くの樹種で18度から25度の範囲であり、
15度以下や30度以上では発根が劣る傾向がある。
露地での挿し木は地温が上昇する春が敵機である。
休眠枝挿しでは、芽の充実した1年生枝を発芽前に切り取って挿し木する。
そのため、発芽直前が敵機であるが、
挿し穂を休眠期に切り取ってポリ袋やビニール袋に入れて密閉して冷蔵しておけば、
5月頃まで挿し木が可能である。
なお、温室、温床、温熱マットを用いれば、
気温の低い時期の挿し木が可能である。
この場合は挿し穂の休眠は破れていること
(休眠打破に必要な低温に遭遇した後)が重要である。
⑤発根を促進する作業
発根促進剤の効果は樹種によって異なるが、
処理方法には低濃度溶液に挿し木基部を長時間(14~22時間)
浸漬する方法、高濃度溶液に瞬間的に浸漬する方法、
粉剤の粉衣処理などがある。
挿し木前に、挿し穂に十分に吸水させる。
ただし、枝の中の貯蔵養分の流失を防ぐために、
給水は1時間程度にとどめる。
挿し木作業の際は、箸や細い棒などで床に穴をあけて、
挿し穂の基部を傷つけないように差し込むなどの注意も必要である。
⑥挿し床の水・交戦・温度の管理
挿し木床は、挿し穂の給水と蒸散のバランスが保たれ、
葉の光合成が高まって光合成産物や発根促進物質が、
挿し穂の基部へ充分贈られるように管理する。
第一に、根のない枝を挿して発根を促す挿し木繁殖では、
床土の水の保持が最も重要である。
「初期の発芽時はたっぷり、発根が進むときは水を控えめに」
を基本にして、定期的に水を補給する。
水に含まれる塩類が1400ppm以上の濃度になると根の発生や
生育が阻害されるので、水質に注意する。
気温や床温の上昇や蒸散による挿し穂の乾燥を防ぐためには、
遮光が効果的である。
ヨシズや寒冷紗をかけ、ハウスのすそ上げ換気などによって
温度上昇を抑える。
ただし過度な遮光は光合成を妨げ、発根に悪影響が出るので、
20から30%の遮光にとどめる。
⑦無肥料でスタート、芽の伸びが再開したら施肥
挿し木床に肥料分が多いと、浸透圧で挿し木の切り口から
水分が逃げやすく、また新根が濃度障害を受けやすくなる。
箱挿しなどの場合には、無菌で肥料分の無い資材
(パーライト、バーミュキュライト、鹿沼土、ピートモス)
を混合して用土を作ると良い。
施肥のタイミングは、休眠枝挿しでは、いったん生育停止した、
新梢が再発がする時期である。
挿し穂全体の60%ほどが再発芽や発芽したら施肥を行って、
挿し穂の生長を促す。
ただし濃度障害に注意が必要で、緩効性の固形肥料を用いるか、
薄く希釈した液肥を数回に分けて与える。
寒冷地では、チッソの遅効きによる冬季の凍害を回避するため
9月以降は施肥をしない。
ふう。なかなか有用な記述が多く、
引用するのにも骨が折れました(笑)
ちなみに、種から育てる場合は、
5度の低温に90日間で休眠打破できるらしい。
来年、試してみよう~。
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