ワインの造り手の思想~ドメーヌ タカヒコ栽培編〜

2018年のワインアカデミー参加の際の記事。
旧ブログより引っ越し。

話の内容は僕のメモに依存してます。

・畑の概要
面積は4.5ha、植栽は2.5ha。
余市の平均面積が6.5haであるから、やや小さめ。
1人で管理できる面積を意識している。
現在は研修生も含めて2人で管理なので、少し余裕あり。
実感としても2haを超えると、手が回らなくなる時があるとのこと。収量は少ない年で8トン、多ければ13トンくらい。

植えてある葡萄品種はピノ・ノワール。
ドイツ系やスイス系のクローン、
マリアフェルダーなどの大きい実をつけるものを中心に。
寒暖差が大きく、結露しやすい環境では栽培しやすいから。全体の3割〜4割はMV6。

ディジョン・クローンは余韻を含めた味わいは良いが、
実と実が密着し、灰カビ率が高くなり、収量も低くなる。

クローン13系統を利用し、収穫時期がズレるようにしている。
おおむね10月20日~30日の収穫となっている。
クローンの違いによって、花ぶるいの起こりやすさや、
病気のなりやすさにも差がある。

・北海道を選んだ理由
自分で畑を持つにあたって、いろいろな場所を検討した。
長野も考えたが、ヴィラデスト・ワイナリーで標高700~800m。
これより標高が下がると気温が高すぎるし、
標高を上げると冬の気温が低くなりすぎる。

北海道だと長野での標高1000mくらいの気温になる。
これはだいたい軽井沢ぐらい。
そして雪の多さが凍害から守ってくれる。

長野の標高の高い場所でも雪は積もるが、
どうしても雪解けが早くなってしまう。
標高による寒さでは、
下からの暖気を帯びた風によって雪が溶ける。
その後に寒波が来ると、その寒さで樹がやられる。

次に考えたのが北海道。
世界的に見ても北海道は良い気候と言える。
積算温度も1300前後とブドウに適している。
また、本州の欠点でもある秋雨が少ない。
特に収穫時の雨は玉割れを引き起こす。

また、収穫時期はなるべく遅らせたいが、
クールクライメント、寒い状態ではブドウは水を吸わない。
それでいて葉が緑のうちは糖度が安定して上がっていく。
本州の9月終わりの収穫ではBrixや酸度が下がってしまう。

そして北海道の中でも、余市は海が近く、霜が遅い。
秋が遅いとも言えるが、
霜が来るまではブドウを樹にぶら下げておけばよい。

欠点は晩生の品種(北海道で11月に入ってから熟す品種)は、
どうしても青臭さが残ってしまうこと。
土地に合う品種を探すことが大切。
9月後半~10月後半くらいに収穫を散らせると理想的。

早生品種の筆頭はミュラートゥルガウ。
糖度が年によってバラつくが。
糖度12までしか上がらない年もあれば、
糖度20まで簡単に上がる年もある。

晩生品種ではケルナー。
ただ、糖度は非常に安定する。

品質の良いものだけを目指すなら、
やはり晩生品種をうまく育てること。
ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、
そしてピノ・ノワールあたり。

・農薬、除草剤について
品種によって、有機栽培のしやすさも違ってくる。
ドイツ系は全体的に農薬ありきの品種なので難しい。
ケルナー、ツヴァイゲルト、ミュラートゥルガウあたりは
農薬なしで育てるのは大変。
最近造られた品種はどうしても化学農薬を前提にしている。

自分としては、
化学農薬はどうしようもないときに使用するというスタンス。
農薬に依存すると、「なぜその症状が起こるのか」など、
分からなくなってしまうから。

ブドウ栽培には「感性」が重要だと考えている。
農薬に依存しすぎると、感じ取る力が下がっていく。

同様に除草剤もまかない。
やってて気持ち悪いから。
これは自分の感性。
そう感じるからやらないだけ。

ただ、そんなにストイックに有機栽培をやる気はない。
大事なのは、周りの先輩栽培家が
「曽我ができるならウチでも」となること。

農薬1/10でキレイな畑、病気も無くて、虫の害もない。
そうなるなら、お金も節約できるしやってみよう、となる。
自分だけ有機栽培やっても何の意味もないから。

・使用農薬について
使用しているのは、主に銅剤。
ICボルドー、コサイドボルドーなど。
JAS有機の認定を受けているもの。

今の考え方としては、なるべく銅の量を減らしたいということ。
デュポン社(コサイド・ボルドー)が銅を減らせる。
だいたい1/6~1/7まで減る。
超化学農薬企業が銅を減らす薬剤を開発する、
というのはなかなか皮肉だけど。

硫黄と石灰の合剤は春先に散布。
アブラムシやカスミガメ、カイガラムシよけに。
BT剤、微生物剤なんかは灰カビ予防に使う年もある。
あとは石灰の葉面散布は現在検討中。

イモ虫類にはBT剤。
飛んでるチョウが多い年はまく。
スズメガが大発生する前にまく。
サビダン硫黄合剤をまくこともある。

ブドウトリバについては、
観察していると春、開花直後くらいに卵を産んでいる。
越冬場所を作らないことが大発生を防ぐ基本。
山を背負った畑では厳しい。
落ち葉の下や木の皮で越冬してしまうから。
小さいうちは果皮を食べる。
食痕を見つけたらBT剤。

・剪定、誘引、摘芯について
長梢剪定。
北海道では枝が折れるからムリと言われたので、
意地になって続けている部分がある(笑)
1本だとリスキーなので、春と冬の剪定に分けている。
冬はコルドン残して短梢と長梢に。
春には短梢の方を落とす。

誘引は長梢は芽の向きを一定に。
寝ないように固定している。
テープナーで充分。

摘芯は刈り払い機のバリカンバージョンみたいなやつで。
2.5haなら1日あれば終わる。

垣根で作るなら根は下へ向かわせたい。
毎年、通路に出る根は切っている。
根を切ると樹にダメージを与えるという説もある。
ただ、余市は樹勢が強いので、その対策。
1年だけ切っても逆に根が増えるので、
樹勢は強くなってしまう。
毎年続けることが大切。

この後、ワイナリーに場所を移して、醸造の話も。

しかし、栽培哲学の話もたくさん聞けて良かった。
個人的には「観察」の話が心に響いたな。

そういえば、DRCでエシェゾーなどの栽培を担当して、
今はビオでワインを作っているヴァンサン・ルグー氏の、
こんな言葉を読んだことがある。

「最も大事なことは、observation(オプセルヴァシオン/観察)。
 すべてにおいて、自分の目で見て確認するということです」

共通するものを感じる。

 人気ブログランキングに参加しています。
北海道のワインを全国に広めるため、クリックをお願いします!

投稿者: chatnoir2010

北海道初のワイン用ブドウの苗木屋を目指して奮闘中。2019年は新規就農研修、最後の年。いよいよスタート間近。がんばります!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。